自己嫌悪-6
「うん。そうだね……ママが待ってる」
カリーは頭領の言葉を繰り返し、ポロに振り向く。
「ポロ、ごめんね?」
カリーはポロを抱き締めて謝った。
〈……嫌……イヤだよ、カリー〉
やっと事態が把握出来たポロはカリーにしがみついて涙を流す。
こんな急に別れなければならないなんて考えた事なかった。
ずっと一緒にはさすがに無理だとは思うがいくらなんでも突然すぎる。
やっと戻ってきたのに……美味しいものも沢山作ったのに。
「ゴメン。本当にゴメン。ポロの声が聞きたかった……ポロの笑顔が見たかった……それが心残りかな……」
しがみつくポロの背中を擦り、カリーはポロの手に黒いシュシュをひとつ握らせる。
〈心……残り?〉
カリーにとって大事な……ゼインに貰った大事なシュシュを渡されたうえに、心残りだなんて……まるで永遠の別れのようだ。
(ゼインの事、お願いね)
聞き取れないぐらいの小さな声に、ポロはハッとしてカリーを見た。
カリーは見たことが無いぐらい綺麗に……そして、儚く微笑んで立ち上がる。
「荷物は?」
問いかける頭領に、カリーはこれだけだと持っていた鞄を軽く持ち上げて見せた。
「それでは、突然で申し訳ないが娘は連れて帰ります」
深々と頭を下げる頭領に、ゼインも軽く頭を下げ、カリーの背中に声をかける。
「……元気でな」
カリーは足を止めて、振り向かずに返事をした。
「……バイバイ、ゼイン……」
ヒラヒラと後ろ手を振って歩き出すカリー。
もう一度頭を下げた頭領は、彼女の後を追いかけて横に並んだ。
「あのちっさい男は?」
パパの演技を止めた頭領が低い声で聞く。
「ただの仲間よ」
カリーは簡単に答えて、目を弄った。
手には茶色のコンタクト……カリーの目は夕日を反射して鮮やかな赤に戻る。
「おかえり、カリオペ」
おどけた口調の頭領を無視したカリーは、手の中のコンタクトを力いっぱい握り潰したのだった。
カリーと頭領の姿が見えなくなると、ゼインは荷物を担いで宿屋へ足を向ける。
「ゼイン!良いのか?!」
部外者だからと黙っていたケイだったが、我慢の限界。
ポロの記憶を見た彼としては間違っている思うのだ。
こんなにも想い合っているのに、ここで別れるのは絶対に大間違いだ。