自己嫌悪-13
「……俺は……行かない」
何が悲しくて2人がしっかりくっつくとこを見に行かなきゃならないのか、とゼインはスランの言葉をはね除けた。
「行かないじゃねぇんだよっ!!行かねぇとアイツ殺されっぞ!?」
「は?」
父親と自宅に帰ったカリーが、何故殺されるのか……意味が分からない。
スランは苛ついて頭を両手でぐしゃぐしゃにした。
「あ゛ーーーーっ!!もういいっ!!バラす!!」
スランはキッとゼインを睨んでハッキリと伝える。
「アイツは暗殺集団『シグナー』に所属する暗殺者だ!」
「…………………………はあ??」
寝耳に水の内容に、ゼインはたっぷりと間をあけて間抜けな声を出した。
スランは足で床をトントン踏みながらゼインを睨む。
「待て待て……え?どういう事だ?」
「うるさい!移動しながら話す!」
待てない、と答えたスランは踵を返して部屋を出ようとした。
「ストッーーップ」
「ぶっ」
それを止めたのはケイの作った水の壁。
スランはまともにぶつかって嫌な顔で濡れた頭を振る。
「まずは詳しく話す!その後、どうするか決める!あんた1人で焦ってちゃやれる事もやれない!」
ケイの指摘はごもっとも……1人で考えて1人で動く事の多いスランはぐっと息を詰まらせた。
「……分かった……」
スランは大きく息を吐いてベットにどっかりと腰を降ろす。
苛々と貧乏揺すりをするスランの前の床に、ゼインとケイ……そして、いつの間にか服を着たポロが座った。
「カリオペは『シグナー』を脱走してる。脱走した暗殺者は裏切り者として拷問、処刑される」
スランの言葉にポロは両手を口に置いて息を飲んだ。
「『脱色』っつってな、身体の色を抜く薬とカラーコンタクトで変装してた。……俺はお嬢ちゃんの飼い主に雇われてて、始めにアイツとやりあった時に気づいた。その後、船で確信してお前らに近づいたってワケ」
話が進むにつれてケイがポロを背後に庇うように動く。
「大丈夫、もうクビになったからお嬢ちゃんを殺ったりしない」
スランは苦笑して話を続けた。
「父親ってのは多分、シグナーのメンバーだ……いくら『脱色』してても近くに居りゃ分かる。特にシグナーはメンバー間の絆が強いからな」
「……アイツ、何で脱走なんかしたんだ?」
ゼインの質問にスランがギリッと柳眉を逆立ててゼインの顎を蹴りあげた。