自己嫌悪-12
「……お・ま・え・は・なぁ〜……」
テーブルの上にずらりと並んだ酒瓶に全裸の2人……どう見ても酔った勢いだ。
スランは両手で拳を作ってありったけの力を込め、ゼインの頭を両側からぐりぐりと締め付ける。
「いぃてててててっ!」
ゼインはスランの手から逃れようとジタバタ暴れた。
そこに、やっと追いついてきたケイが部屋に入り、ポロのあられもない姿を目撃する。
「ポロ?!」
ケイの声でハッキリ覚醒したポロは慌てて布団で身体を隠した。
「ゼ〜イ〜ン〜」
大量の酒瓶で状況を把握したケイはギギギギとゼインに顔を向ける。
ケイの手の平は上に向けられ、空気中の水分を集めてぎゅるぎゅると回りながら水の球を作っていった。
「いい?!ストップストップ!!」
そんな水の球をぶつけられたら絶対に痛い。
ゼインは慌てて声をあげてケイを止めようとする。
「問答無用っ!!」
「ひぃっ」
ケイの怒号と同時にスランはゼインの頭を離して飛び退き、ゼインは頭を抱えてしゃがんだ。
「やめてぇっ!!」
スランと入れ替わるように布団を身体に巻いたポロが割り込む。
「やめて下さい!」
ポロは右手で胸元を押さえ、左手を広げてゼインを背後に庇った。
その姿に男3人はポカーンと口を開ける。
「……喋っ…た……」
ケイの手の上で回っていた水の球がブシュウと蒸発して消え、ポロはハッとして左手で自分の口を押さえる。
「すっ……げぇっ!!」
「喋った!ポロが喋ったぞ!!」
「きゃあぁっ」
興奮したゼインとケイが後ろと前からポロを抱き締め、挟まれたポロは悲鳴をあげて目をシロクロさせた。
「そんなこたぁどうでもいいんだよっ!!」
それ所じゃない、とスランは絡まっている3人を怒鳴りつけてゼインに服を投げた。
「行くぞっ」
スランは勝手にゼインの荷物をまとめていく。
「ちょっ…行くぞって何処に?!」
問いかけながらもゼインは投げられた自分の服を着た。
全裸じゃいくら何でも間抜けだ。
「カリオペんとこに決まってんだろが!!」
スランの言葉にゼインがギクリと反応する。
内容もだが、スランがカリーの事を『カリオペ』と呼んだ……カリーはスランには本名を教えていたのだ。
長く一緒に居たのに知らなかった自分……短い間にカリーの心を掴んだスラン。
やっぱりカリーはスランの事が好きなのだ。