自己嫌悪-11
「偶然会ったんだよ」
ケイはその時の状況を詳しくスランに教えた。
それを聞いたスランはケイを突き離してガリガリと頭を掻きむしる。
「ああっ!!くそっ!」
カリーの父親は暗殺集団シグナーのメンバーに違いない。
いくら『脱色』してても完全に隠せるワケが無いのだ。
今まではあまり人の集まる所に行ってなかっただろうが、ファンは大陸中心国。
見つかる可能性はどこよりも高い。
見つかったが最後……脱走した暗殺者の末路は見せしめの拷問の末、処刑だ。
「チビんとこ行って来る」
多分、宿は始めの日に泊まった所。
「俺、俺も行く!!」
ケイは店をほっぽって走り出したスランを追いかけ、そのケイの背中に母親の怒号が響いた。
その頃、件の宿屋ではゼインが自己嫌悪に陥っていた。
目が覚めたら全裸のポロを抱いていて、心臓が止まるんじゃないかと思うぐらいに驚いた。
徐々に甦る微かな記憶に、自分が何をしたか分かった時、自分で自分の首を絞めたくなった。
よりによってポロをカリーの代わりにするとは……だから酒は呑まない事にしていたのに、カリーが居なくなってしまって呑まずにいられなくなった。
ぐっすり寝ているポロの頬にある涙の跡を指でなぞったゼインは、どーんと落ち込む。
そこまで無理矢理じゃなかったが、ポロが望んだワケじゃない。
「……ごめん……」
何でこうなるのか……カリーが離れてくれるのを望んでいた筈だ。
家族と共に自宅に帰るという最良の形で別れた筈なのに、ゼインの心はカリーを求めて止まない。
「女々しい……」
ゼインの頭の中はカリーへの恋慕と、ポロへの罪悪感でいっぱいになる。
そうやって頭を抱えいると、にわかに階下が騒がしくなった。
何やら言い合いをしていたかと思ったら、ダンダンダンと階段を駆け上がる音。
バキャッ
「このっっ大馬鹿ドチビがぁっ!!」
ドアを蹴破って乱入したスランは、ドカドカと足音も荒くゼインに近づき灰色の髪を掴んだ。
「いっ!?何だよ?!」
ドチビは言い過ぎだと言い返すゼインを、スランはベットから引きずり出す。
「……ん〜……」
余りの騒がしさにポロが目を擦りながら身体を起こした。
ベットから引きずり出されたゼインも、ベットの上で身体を起こしたポロも……全裸。