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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第12話-29


 『ああん、あんっ、あんっ!』
 『ゆ、ユミさん、声が……声がでかすぎっ……』
 『だ、だってっ……となりも、すごいんだものっ……!』
 『ひあっ、ユ、ユミさん、だめですっ……うわぁっ……』

 繋がったところから火花が散るような情交を終えて、抱き合ったままの岡崎と清子。
「あ、あのな、まーちゃん……」
「なにかな?」
 うっすらと聞こえてきた、お隣さんの“励み声”を耳にして、清子が顔を紅くしながら、問いかけてきた。

 『あ、ああっ、よっくん、とめちゃだめっ、だめっ、もっと、もっとはげしくしてぇっ!』
 『おねがいだから、こ、こえをおさえて、ユミさぁあん』
 『いやいやっ! となりに、まけたくないのっ! もっと、もっと、きもちよくしてよぉおおぉっ!!』

「ここ、壁、うすいんとちがう……?」
 隣の“励み声”が聞こえるのだから、こちらの声も聞こえているに違いない。と、いうか、“となりもすごい”と言っている段階で、間違いのない話である。
「普段は気にならないんだが……“あの声”だけは、やたらと響くんだこれが」
「ま、まーちゃああああああん!!」
 『ああっぁあああぁぁぁぁぁぁっ!』
 となりのユミさんが、絶頂に達したらしい声と、清子の叫び声が、綺麗にリンクした。
「不思議だな、女の“あの声”って」
「の、のんきなこと、いわんといてっ!」
 清子に、ほっぺたを強くつねられる。それにも堪えない様子で、岡崎は泰然としているのだ。
「隣人の八日市くんは、城東体育大学の二回生で、今年から越してきた人の良い男だよ。お聞きの通り、彼女もいて、夜もなかなかお盛んだ」
 岡崎は隣の部屋に、何度か夕飯に誘われたこともあるという。“聞かれても平気な人か?”と、探りを入れられたらしいことは、以後の夜からその“お盛んな声”が頻繁に耳に入るようになったことで、明らかになった。
 ちなみに、となりのユミさんは、“柏木由美”といって、“城西女子大学”の女子バレーボール部で、主将とセッターを務めている三回生とのことだ。“城東体育大学”に通うという隣人の大学生“八日市(よっくん)”が、その“柏木由美(となりのユミさん)”を、暴漢から助けたことが縁で、深い仲になったらしい。
「な、なんで、そんなに、平然としとれるの……?」
「その方面は、多少は、枯れてたからかな」
「枯れて?」
「まあ、な」
 監督のエレナに受ける“ガンバッタ賞(ほっぺたへのキス)”に、秘かに喜ぶ姿を見せていたが、岡崎は、心底の部分では、冷静になっている自分を見つけていた。
「やっぱり、清子のことが、忘れられなかったんだな」
 清子と再会したことで、それを思い知る。関係を終わらせたとは言え、その影を、知らず常に慕い続けていたのだと…。
「まーちゃん……」
 清子は、胸が鳴った。自分も、そうだったから。自分で、“さよなら”を言ったはずなのに、どうしても、忘れられなかった。
「清子、好きだ」
「!? も、もうっ……ホンマ、いきなり、なんやから……」
 ぎゅ、と、身体を抱き締められて、清子は乙女のように、その腕の中で身を縮こませた。
「ウチも、まーちゃんのこと、好きや。名前見ただけで、こっちに来てしもうぐらい、ずっと好きやったんやって、ようわかったわ」
 もし過去に戻れるというのなら、“遠距離恋愛”になって、気持ちが離れてしまうことに怯えるぐらいなら、始めから諦めた方が良い、と、そう考えていた、中学生の自分を励ましたかった。“そんなに弱い気持ちや、あらへんやろ”と…。
「週末の試合、終わったら、また離れ離れになるけど、でも、“さよなら”は、もういわへんよ」
「ああ」
「大好きや、まーちゃん。大好き……」
「俺も、だ。清子……」
 今夜だけで何度目になるかわからない、濃密な口付けをかわす、そんな二人であった。



 −続−



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