第6話 新たな陵辱者-2
俺だって、割と名の知れた大学を出たさ。
でも、就職難で就活に失敗して、卒業して1年後にようやく入った会社はブラック企業。
半年で辞めた。
それからは、世間で言う、非正規雇用というやつだ。
彼女なんているわけない。
結婚?
自分自身の人生すらままならないのに、他人と人生を共有するなんて想像すらできない。
数日後、夜勤明けの疲れた体を引き摺って、家に辿り着いたときだった。
向かいの家のドアが開いて、はしゃいだ声が聞こえてきた。
出勤するアイツ。それを見送る女。
二人は玄関先でハグしたかと思うと、キスまで始めやがった。
後ろから蹴りを入れてやろうかと思った。
分かっている。単なる僻みだっていうことは。
しかし、何なんだ。同じ年齢で、この天と地の差はよ。
俺の怒りが頂点に達したのは、次の日の朝だった。
連日の夜勤に、疲れはピークだった。
前からアイツが歩いてきた。
折り目のついたスマートなスーツにネクタイ姿。
片や、くたびれたジーンズに着古したジャンパーの俺。
すれ違うときに目が合った。
その時のアイツの目。
俺の家に挨拶のきた時とは違う。
それは、明らかに人を見下す目だった。
軽蔑の視線を俺に向け、アイツは足早に遠ざかって行きやがった。
その背中を見ながら、俺は思った。