最終話-5
怖い。
まるで、狂人の集団に放り込まれたようだった。
「いくわよ……暴れたりしたら、承知しないから」
ぐぐっ、と異物が秘肉をその形に押し広げながら、体内に侵入してきた。
機械的な振動が、膣道をグイングインと揺さぶりだす。
一番深い部分からとろとろと蜜が流れ出し、皮肉にも、よりいっそう奥までバイブを咥え込もうとする。
自身の意識とは裏腹に、マヤの中の女の部分が反応し、ひくん、ひくん、と、腰のあたりを痙攣させる。
「いや……抜いて、抜いてええええっ!」
「やだ、気持ち悪い。腰振ってるとか、ありえないんだけど……ああ、もうちょっとで全部入っちゃう」
「あ、いや、やめて……んっ……! あ、あ……っ!」
ずん、ずん、とバイブを持った手が、滅茶苦茶な強さで突き上げてくる。
頭がぼんやりとし、視覚も聴覚も、すべてがあやふやになってしまう。
「……いやらしい女。もう、死ねばいいのに」
誰かがマヤの髪をつかみ、拳で頬を殴った。
唇の端が切れる。
また、別の誰かがハサミを手に向かってくる。
不気味に輝く銀色のそれを、マヤの艶やかな髪にあてがう。
ジョキッ、ジョキッ。
耳障りな音と共に、いままで体の一部だったものが、パサパサと無残に落ちていく。
「ねえ、耳もついでに切っちゃえば。この耳が無けりゃ、主人と浮気の電話をすることもないだろうし」
「そうよ、こんな目もいらないわ。色目を遣うしか、脳の無いメスガキが」
「あそこの毛も燃やしちゃおうか。ここが、ぐちゃぐちゃになれば、もうあのひともエッチしようなんて思わないわ、きっと」
バイブを持っていた手が離れる。
ごとり、と音がして、まだ振動を続けているそれが床に転がった。
じりじりと、母親たちが距離を詰めてくる。
シュッ、とマッチを擦る音。
火薬の匂い。
本能が、間近に迫りくる『死』の恐怖を感じ取った。
マヤはもう、逃げたいとは思わなかった。
自業自得、よね……。
ここで楽になれるなら、別にそれでも構わないわ……。
残していく母親のことだけが、気にかかる。
それも、もう、どうしようもない。
ふうっ、と息をついて、全身の力を抜く。
耳に、ハサミの刃が触れる。
金属のひんやりとした感触。
これから与えられる激痛を、容易に想像できた。
さよなら。
誰への言葉なのかもわからぬまま、マヤは小さくそれだけを呟いて、再び瞳を閉じた。