最終話-4
皆の手が止まる。
佐伯の妻が一歩前に出る。
教室で会った時には、おどおどとして頼りなげな雰囲気だったが、今は怒りが先立つのか、般若のような形相でマヤを睨みつけていた。
その手にあったのは、佐伯がマヤとの戯れに使ったバイブレーター。
巨大な男性器を模したそれが、スイッチを入れられ、振動音と共にグロテスクにうねる。
狂った雰囲気に酔う女たちの輪から、嬌声があがった。
「あはは、こんなすごいの使ってたの? ていうか、普通こんなの入る?」
「ガバガバなんじゃない? やりまくってるから、そんなのじゃないと満足できないんでしょ?」
「試してみればいいわ。本当に、入るのかどうか」
女たちの視線が、マヤの股間に注がれる。
そこに掛けられた縄がぐいっと左右に寄せられ、また締め付けられる。
真っ赤に熟れた女陰が、無防備に晒される。
「ちょっと、あんたのココ、おかしいんじゃないの? もうドロドロじゃない」
バイブレーターの先端が、敏感になりすぎた割れ目に押し当てられた。
亀頭を模した部分が、陰唇を前後に擦りあげていく。
誰かの細い指先が、クリトリスを包み込む皮膚を押し広げた。
剥き出しになった淫豆に、強烈な振動が容赦なく与えられる。
「いやあああああああっ!」
あまりの羞恥に、マヤは痛む体を捩り、涙を流しながら懇願した。
「お願い、もう、やめてください……お願いします……」
「はあ? 今からがいいところなんじゃない……ほら、こういうのが好きなんでしょ?」
「きっと刺激が足りないのよ。奥まで突っ込んじゃえば、アンアン言って悦ぶんじゃないのー?」
誰かが発した言葉に、皆が手を叩いて爆笑した。
上等の服やアクセサリーを身につけ、上品な顔をした、主婦の群れ。
裸で縛られた女。
強烈な違和感。
壊れた空気。
いま、部屋の中はどんなに残酷なことをしても、許される雰囲気が満ちていた。