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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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23 強者の渇求(性描写)-6

 しかしツァイロンは「付いて来い」と命じただけで、サクサク廊下を歩き出した。
 主と助手以外は立ち入り禁止の棟に入り、瀟洒な扉の前でツァイロンは足を止める。

「今日から、お前の閨はここだ」

「……」

 キョロキョロと、思わず室内を見渡した。
 奇妙な部屋だった。
 若草色の壁紙や、柔らかい寝台。備え付けのシャワー部屋へ通じる扉もあり、大理石の調度品など、今までの閨より立派な程だ。
 部屋面積も広かったが、閨として使えるのは半分。
 真ん中で頑丈な鉄格子で区切られ、向こう側は魔力封じの敷石で作られた牢獄となっていた。
 牢獄の寝台には、不貞腐れた顔の青年が胡坐をかいている。
 初めて見る顔で、青みがかった銀髪は一本の三つ編みにされ、ツァイロンと同じ大陸東風の衣装を着ていた。
 ツァイロンは鉄格子の向こうの青年へ、声をかける。

「ミスカ、お前の行儀手本を連れてきたぞ。前に話したエリアスだ」

 『ミスカ』と呼ばれた青年は、金の双眸に反抗的な色をたたえ、無言でツァイロンを睨んでいた。
 しかしその射殺しそうな視線より、ツァイロンの言葉の方が、エリアスを驚かせてた。

 何と言った? 行儀手本?

 まじまじと見上げたエリアスに、ツァイロンは薄く笑った。

「ミスカは私の自信作だが、とにかく反抗的でかなわん。そこで……モノは験しだ」

 エリアスの頬を掴み、唇を指でなぞる。

「お前が主たちへ従順に従う様を、ミスカに見せろ」

「わたくしの仕事を……ですか?」

「そうだ。お前は他の性玩具と違い、仕事を楽しめない。だが、意に添わなくとも主に従うのは当然と教えてやれ」

 ツァイロンが皮肉気に口端をつりあげた。

「出来損ないにも、それなりの使い道はある」

 今更ながらチクンと胸に突き刺さったが、表情には出さず、一礼した。

「かしこまりました」

「これはお前の処遇にも関係する。ミスカの態度が改善しなければ、廃棄も覚悟しろ」

 薄い唇と細い目に、酷薄な色が浮かんでいた。脅しではなく本気だ。

「……はい」

「あとは普段通りにやればいい。仕事中、ミスカは空気だとでも思え」

 閨へエリアスを押しやり、ツァイロンはそのまま部屋を出て行った。
 嫌な沈黙の満ちる室内で、仕方なくミスカへ声をかけてみた。

「あの……ツァイロンさまには従うべきですよ?作り主なのですから」

 だがミスカは険悪に睨むだけで、何回か話しかけても返事は無い。
 声を封じられているのかもしれないと諦め、エリアスは鉄格子から離れた。
 荷物を置き、寝台を整えていると、背後から低い棘のある声が飛んできた。

「せいぜいお行儀よく腰振れよ。良い子ちゃん」

――どうやら喋れないわけではなかったらしい。

 一瞬むっとしたが、振り向く事なく無視した。ちょうど主の一人が閨に来たからだ。

 仕事の最中、あれは空気だ。



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