マルセの女-1
二〇十二年七月一日。
日本国。
時の厚生労働省は牛の生レバー（肝臓）の提供禁止を閣議決定。
前年四月より、牛の肝臓内部から重い食中毒を起こす腸管出血性大腸菌Ｏ１５７の発見により提供禁止を纏めた。
違反した飲食店には自治体が行政指導を行い、悪質な場合は「２年以下の懲役か２００万円以下の罰金」を科すことができる。
ただし、殺菌など安全に食べるための対策が見つかれば解除を検討する―――と。
あれから四十年の月日が経った今、地下世界では牛の生レバーを巡る政府と民間の闘いが静かに…しかし苛烈に行われている事を知っている者は少ない。
【マルセの女】
「姉さん姉さん、今日もいっちょどうだい？溜まってんだろう？」
「何の話かしら？」
「またまたぁ！ここいらを歩くってこたぁそういう目的だって分かってんだからww」
「もしかして…あれのこと？」
「そうそう、うちにはプルプルとしたのが揃ってるよぉ！しかも安全！病気なんかこれっぽっちもない！」
「…ｺﾞｸﾘ…そ、それってやっぱり…」
「ああ、生さ。な・ま・レ・バ・ー♪」ｺｿﾘ
「動くな。厚労省直轄安全食品査察部、通称《マル生》です。貴方の店を生レ密売法違反の疑いで強制捜査します」
「やべー！マルセだ！逃げろー！」
「逃がすな！全員取り押さえて！」
『はっ！』
時は二〇五二年。
地上は最早死の灰、放射能等の汚染に拠り人々は地下へと居住を構えた。
しかしそれより地下の世界も有り、そこは売春、賭博、犯罪が横行。
世捨て人が集まるスラム街と化していた。
その中でも主に重罪となるものが、先に言った『生レバーの提供』である。
実のところ、生レバーを安全に食べるための対策が未だ見つからず、それでも生レバーを求める市民が後を絶たず、文字通り苦肉の策とし闇市場での生レバーの提供を強行。
それを重くみた政府は厚労省直轄安全食品査察部、通称《マル生(ｾｲ)》を発足。行政が強制査察を執行できる権限を与える組織が出来上がった。
政府と民間、光と闇のいたちごっこは
あ、やべぇ。携帯だと文字数足りねぇ。
完