第四章 淑女墜落-11
(ああ……ダメッ……ジッとしてらんない……)
肛門に向かって猛烈な勢いで押し寄せているグリセリン液。
その液体が、唯一の排泄箇所を塞がれている為に寄せては引きを何度も繰り返す。
粘膜を刺激され続けている腸がキリキリと痛み、とてもジッとしてはいられない。
紅潮した貌にはじっとりと汗が滲み、呼吸もあからさまに乱れはじめていた。
「お、奥さん、大丈夫ですか? 顔が赤いし、凄く汗を掻いてますよ?」
「ちょ、ちょっとお腹が痛くて……で、でも平気ですから」
美優は膝の上に置いた手をギュウッと握り締め、必死に祈った。
この三人に早く帰ってもらわないと大変なことになる。
もう、そう長くは持たないだろう。
下腹部を襲っている感覚が一秒ごとに恐ろしいものへと変わっている。
「奥さん、お腹が痛いんだったらトイレに行ってきたらどうです?」
「えっ―――?」
大村の意外な言葉に、美優がパッと顔をあげて安堵の表情を向けた。
「トイレはその廊下の突き当たりになります。どうぞ気になさらずに」
「は、はい、すみません……み、皆さん、ちょっと失礼します」
排泄できる―――その思いが美優を逸らせた。
アヌスに打ち込まれている栓に二つの鈴がついていることなど、まるで忘れていた。
チリンチリン
腰を上げた瞬間、不意に鳴り響く鈴の音。
あっと小さく声を漏らした美優に、男たち全員が眼を向けた。
「あ、あの……すみません、トイレへ行ってきます」
不思議そうな顔を向けている源太郎たち。
だが何も言い訳が思いつかない。
それより一刻も早くトイレへ行きたかった。
美優は、下半身のほうでチリンチリンと鳴る音に顔を赤らめながらも、そそくさと廊下へ出ていった。