ゼロ-4
「で?俺は何をすれば良い?」
掃除か?洗濯か?警備か?何か薬の被験者か?それとも夜のお相手か?
何でも出来るぞ、と言うゼインに男はふむふむ頷いて言い放った。
「全部です」
「……全部……ね」
ゼインは視線を反らして乾いた笑いを顔に浮かべる。
「それと、話をして下さい」
そう言えばさっきも話せとか言ってたな、とゼインは思い視線を戻した。
「何の?」
「何でも」
やっぱり会話が噛み合わない。
ゼインは天を仰いで胡座のままゆらゆら身体を揺らした。
そんなゼインの様子を黙って見ていた男が、ふと何かに気づいたようにゼインに手を伸ばす。
「いっ!」
「血が出ていますよ」
グイッと髪を掴まれて容赦なく傷口を確認された。
「前の主人が殺された時、殴られたみたいだ……ってぇ」
男は掴んだ髪の毛をグイグイ動かして傷口を診ている。
診てくれるのは良いが扱いが酷い。
「不思議ですね……傷口が塞がっていきます」
「ああ……何かの薬の被験者やった時ので自己治癒能力が異常に高いからな……っつう」
でも、痛いものは痛い……家畜扱いは慣れているが、もう少し優しくしてほしいものだ。
「後で血液を採らせて下さい。調べてみたいです」
男はそう言うと、反対側の手を傷口に当てる。
パシンッ
「いてっ?!」
目の端で青白い光が弾けて傷にビリッと痛みが走った。
「どうですか」
「は?どうって……」
ゼインは傷口に触れて、目を丸くする。
「治っ…てる」
「はい。治しましたから」
至極当然と言った感じで答えた男を、ゼインは低い位置から見上げた。
ダボダボのローブを頭から被るように着ていた男の顔が初めて見えた。
その素顔を見たゼインはギクリと固まる。
雪の様に白い肌に純白の長い髪、薄い唇に乳白色の目。
中心の瞳部分だけが黒く、なんだか爬虫類のような印象だ。
「……アンタ、魔法使いか?」
「違いますが、似たようなものです」
「ふうん……ま、いいや。治してくれてサンキュ」
ゼインのお礼に対して、男は目を伏せて軽く頷いた。