ゼロ-16
「ちょっとぉ!一緒に食べなきゃ意味ないぃ〜!」
丁度、帰ってきた女に現場を見られ、ゼロは笑いながら謝った。
そういえば笑うのも久しぶりだな、と頭の隅で思う。
「悪ぃ悪ぃ」
「んもぅっほら、こっち座って」
女は頬を膨らませてソファーに座れとゼロを促した。
治療しよう、と言う女に必要ない理由を話すと彼女は感嘆の声をあげた。
子供みたいに目を輝かす女に、ゼロはクスクス笑って再び唐揚げに手を伸ばす。
「あ!ダメだってば!服着てからっ!!」
女は慌ててゼロを止めようとして……お約束通り足を滑らせた。
「わきゃっ?!」
「どあっ!!」
倒れ込んできた女をゼロは咄嗟に抱き止めたが、今までの事が頭を掠めてギクリと固まってしまい、2人して床に転がる。
ゼロの頭を掠めたのは今まで実験によって身体を重ねた女達……それが彼女とダブってしまったのだ。
「ごみ〜ん」
女は謝りながら身体を起こそうとしてわたわたする。
その手が偶然にもゼロの股間に当たり、頭に掠めた光景を吹き飛ばした。
「わっ!馬鹿っ!!」
「わきゃきゃっ」
女を咎めると彼女は益々慌てて余計変な感じになる。
「ストップストップ、動くなっ」
身体の上でもぞもぞされたゼロは、堪らず女を抱いていた腕に力を入れて彼女を止めた。
ギュウっと胸に押し付けると、女はとりあえず大人しくなる。
(あ……大丈夫だ)
この腕に抱かれても彼女は大丈夫……生きている。
ゼロは安堵と嬉しさがごっちゃになって自然と笑顔になった。
「ははっお前、落ち着きねぇな」
「うるしゃ〜い」
嬉しくて女の背中をポンポン叩くと、彼女は恥ずかしそうに顔を伏せる。
可愛らしい彼女の仕草にゼロの手がポンポン叩くのから擦る動きに変わる。
「……お前……生きてんな……」
「ん?」
ゼロの言葉を聞いた女は、顔を動かして不思議そうにゼロを見上げた。
ゼロは女と視線を合わせてクスリと笑う。
「俺に触っても生きてる」
「?当たり前じゃん?」
「うん……そうだな…」
あっさり言った女が正しいのだが、ゼロ的には今まで当たりじゃなかったんだから感動しても仕方ない。
ゼロは女のふわふわの髪に、少し躊躇いながら顔を埋める。