ゼロ-11
「あ゛……あ゛……」
暴れていたゼロが不意に動きを止めてベットに倒れ、身体を上下させる。
パシンパシンッと青白い光がゼロの身体のあちこちで弾けた。
男がゼロを治した時の光が、今ゼロを包んでいる。
「素晴らしい……また、耐えましたね」
男はぐにゃりと顔を歪めて汚れたままのゼロを抱き締めた。
「やはり君はゼロに相応しい……私のゼロ……」
ゼロは男に抱かれながら荒い呼吸を繰り返す。
(死なない……死ねない……コイツを殺すまで……)
だから、力が欲しい……圧倒的な力……この男を殺す為の。
男の血を飲む事によって確実に人間離れした力がついている。
だから、耐える……耐えきってやる。
ゼロの蒼い目は日に日に冷たく燃えていった。
そんな日々が丸2年過ぎた……男の血液を飲んでも拒絶反応を表さなくなったゼロの身体は、外見こそ変わって無かったが中身は……多分、男と同じになっているのだろう。
男は人間じゃない。
それだけは分かる……男の血を受け入れたゼロだからこそ言える事。
だったら何者なのだ、と言われたら困る。
ただ、男が化物とか魔物とか言われる存在だとしたら……自分もそうなのだろう。
「ゼロ。見せたいものがあります」
「?」
ある日、男に声をかけられたゼロは掃除の手を止めて、歩き出した男の後に続いた。
見せたいものとは何だろう?どうせ珍しい色の眼球とか、頭皮付きの綺麗な金髪とかなんだろうな……とゼロは嫌な気分になる。
何度か見せられた男の自慢のコレクションを思い出したのだ。
その時、ひとつのドアに気づいた。
そのドアはいつも結界が張ってありゼロには通れないのだが、今は結界が張られておらず少し開いている。
ゼロはドアと男の背中を見比べた後、ドアを開けて中に入った。
ドアの先は長い廊下が続いていた。
両側に他のドアも窓も無く、ただ暗い暗い廊下が延々と続く。
(……不気味……)
地下牢も大概不気味だが、この廊下は段違いで気持ち悪い。
何より、地下牢で感じた時よりも何倍もの既視感を感じた。
ゴッ
「って」
廊下は唐突に終わり、ゼロはドアに額を打ち付けた。
ぶつけた額を擦りながら、手探りで取手を探しそれを回す。
ギギギギギ
「う?!」
開けた瞬間、濃厚な血の臭いがして吐き気が込み上げてきた。
慌てて片手で口を塞ぎ、ゼロはその空間に足を踏み入れる。
そこには左右に伸びた廊下があり、ゼロは自然に右を選んだ。