二人の明日-3
4.
「ふ――っ。ふ――っ…」
肩で大きく息をしている志津。愛花は決まり悪そうに謝った。
「ママ…ごめんなさい…。そんなことしてるなんて思わなかったの…」
「いいのよ。スプーンを落としたら、その数だけお仕置きされる約束だもの。どうせどこかで落そうと思ってたし、丁度いいわ」
本人はいたってサバサバしたものである。女とは割り切りのできる逞しい生き物なのだ。
「それよりママ…。ママ宛に手紙が来てるよ」
愛花はテーブルの上に置いてあった1通の封筒を差し出した。
「差出人が書いてないんだけど…」
「どれ、ちょっと見せてみて?」
愛花は不審げだったが、志津は表の筆跡で誰からの手紙なのかすぐにわかった。
「これはね、懐かしい女性(ひと)からの手紙よ」
志津はペーパーナイフを取り出して封筒を切ると、便箋を取り出して読み始める。
そこには少し乱れた字でこう書かれていた。
『志津様
お元気でいらっしゃいますか? 私は今、海が見える小さな町で真樹子様と2人でひっそりと暮らしています。
取り乱した私が負わせてしまった傷は治りましたが、あの時のショックで真樹子様はすっかり別人のように変わってしまいました。
あれほど自信に満ち溢れていたのに、一日中ベッドに寝たきりでほとんど口も聞いてくれません。
長年、貴女への復讐心だけで必死に生きてきた真樹子さまにとっては、目的を果たしたことで張り詰めていた心が限界を超えてしまったのかもしれません。
真樹子様は奴隷を調教する際に自分でテンションを上げるため違法な薬を服用していたようです。
そのため今でも時々フラッシュバックを起こして暴れたりするのが悩みの種ですが、普段は身の回りのお世話をしていてもすべて私の言うことを聞いてくれます。
あの事件をきっかけに夫と別れ、家族や親戚に後ろ指を刺され、逃げるようにこの街にやって来た私ですが、変態のマゾ女だって誰かに気づかれやしないか、いつもビクビクして暮らしていたあの頃に比べ、今はとても幸せです。
だって愛する真樹子さまを独り占めにできるんですもの!
貴女も真樹子様の調教を受けた身ならわかるでしょう? あらゆる方法で責められ続けて、死んだ方がマシだと思うほどの苦痛の中で突然訪れる絶頂と恍惚…。全身が快感で埋め尽くされ、身体中がオマンコになってしまったような気分は、一度味わったらもう戻れません。
私は一生真樹子様についてゆきます。
真樹子様は少しづつですが快方に向かっているようです。
私はいつまでもお世話を続けます。元気になった真樹子様が私を思いっきり苛めて下さる、その日まで。
いつかまた、貴女とお会い出来る日を楽しみにしています。
沖 直見』
「…彼女…幸せみたいね…」
志津は読み終えた手紙を置くとふっ…と微笑んだ。
「私たちもこのままじゃいけないわ。ちゃんとけじめをつけましょう。ね、愛花?」
愛花は神妙な面持ちで聞いていたが、黙って頷いた。
数年後、真樹子の治療費がかさみ生活に困窮した沖直見が六本木のSMクラブ『ブラック・ローズ』でデビューし、人気M嬢となるのはまた別の話である。
5.
そして3月1日。
この日は星月女学院の卒業式だ。
卒業証書を受け取り、学園主催の卒業パーティーを終えた美貴は急いで道場へと向かった。
待っているのは志津、愛花、つかさ、八千代、春香、薫。忙しいスケジュールの合間を縫って美佳も駆けつけてくれた。
皆、道着姿で一列に正座している。
薄暗いロウソクの明かりだけが照らし出す、薄暗い道場の中。神棚の灯明にも火が灯されている。
これから行うのは、愛し合う部員同士が一生の添い遂げることを神前で誓う剣道部伝統の儀式である。
「それでは始めます。2人とも前に出なさい」
「はいっ!」
「はいっ!」
支度を終えた愛花と美貴は並んで前に出て、神前に蹲踞をした。
2人とも素っ裸。雄蝶役の美貴は赤い六尺褌、雌蝶役の愛花は純白の六尺褌だけを締め込んでいる。そして頭には角隠し。
なんとも奇妙な格好だが、これが代々星月女学院剣道部に伝わる正装なのである。
『鹿島神宮の大御前に申し上げます。
私たちは建御雷神(たけみかづちのおおかみ)の御心により結ばれ、ここに婚礼の儀をとり行います。
これから後は神の教えを守り、互いに愛し合い、苦楽を共にして、世のため人のために尽くします。
謹んで誓詞を捧げて、幾久しいご守護をお願い申し上げます』
愛花と美貴は声を合わせて誓詞を述べた。
2人の前に立つ志津が、張形が乗せられた四方を両手で差し出した。
それは二又の木製の張形で、先端には穴が空いて何段ものカリがあり、全体に妖しく黒光りしている。
学園創立以来、何百人もの処女(おとめ)の愛液と小便と破瓜の血を吸ってきた、伝説の性具である。
一礼して恭しく受け取る美貴。そしてぱくりと口に含んだ。
「うむっ…ぺちょっ…れろんっ…」
口の中に入りきらないほどの張形を丁寧に舐め清め、濡らしてゆく美貴。
美貴はふんどしをずらすと、気合を込めてそれを自らの股間に差し込んだ。
ずぶぶぶぶ…っ!!
「…うああああああっっ!!」
内蔵を埋め尽くす圧迫感に美貴は思わず呻いた。腰がガクガクと震えている。
美少女の股座から張形が飛び出している様子はなんとも倒錯的で美しかった。
薄暗い光の中でぼんやりと浮かび上がるその姿を、愛花はうっとりと見つめていた。
「はぁ…はぁ…。さぁお舐めなさい…」
美貴は張形を鼻先に突き出した。
「はい…」