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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-6

 その後、相模大介は、岡崎への初球に“暴投(ワイルドピッチ)”を犯してしまい、さらに1点を謙譲してしまった。
 櫻陽大学は、トップギアに入った大和を相手にして、それを弾き返すだけのパワーを有してはおらず、結局、試合の結果は、以下のようになった。

【櫻陽大】|000|000|000|0|
【双葉大】|000|000|30X|3|

「アウト!!! ゲームセット!!!」
 櫻陽大学の最後の打者は、3番の御門一太郎だった。彼は、外角に投じられた“スパイラル・ストライク”に最後までアジャストすることができず、この打席では、センターフライに打ち取られた。ただ、この球に一度も空振りをしなかった点は、さすがと言うべきだろう。
「やられた、か……無念!」
 御門一太郎は、大和からはひとつの四球と、記録上は“失策(エラー)”となったが、サードへの痛烈な打球によって、二度の出塁を果たした。しかし、ついに、期待の彼も“安打”を奪うことは出来なかった。
 大和は、二つの四球と一つの失策の、それ以外には、櫻陽大学に出塁を許さなかった。“強打の櫻陽”の名の通り、さすがに奪三振の数は9個に留まったが、それでも無安打無得点試合、いわゆる“ノーヒット・ノーラン”を達成したのである。
 初戦の“完全試合”に続いて、二試合目のノーヒッターである。メジャーリーグで、何度もノーヒット・ノーランを達成した伝説の大投手“ノーラン・リーアン”になぞらえて、“隼のリーアン”と、早くも呼ばれるようになった大和は、この試合で、今季における“最高の右腕投手”という評価を揺るぎないものにした。
 二週間後の試合で実現する、“最強の左腕投手”・天狼院隼人との対決を、待ちきれないと言った様子の“隼リーグ”フリークも現れるほどだ。
「桜子、ナイスリード」
 だが大和は、この“ノーヒット・ノーラン”も、桜子が生み出してくれたものだと思っている。相手の狙うコースを瞬時に読み取り、“スパイラル・ストライク”を効果的に使うそのリードがあるからこそ、大和は全ての信頼を預けて、投球に専念をすることが出来るのだ。
「大和も、ナイスボール」
 二人の間にある強い絆は、綻びの気配さえ見えない。どちらかというと、大和に主導のあるようにも見えていた二人の関係だが、お互いが信頼を寄せ合う、その紐帯の見事な結びつきを見れば、まるで“夫婦”のようだとも感じるに違いない。
 “バッテリー”と言う意味でも、まさに理想的な“夫婦”だった。
「さて、次の試合は見ものだな」
 ベンチで道具をまとめ、後にしようかと言うところで、キャプテンの雄太は言う。本日行われる第2試合目は、法泉印大学と仁仙大学の“天王山”なのである。
 当然ながら、双葉大学軟式野球部のメンバーは、全員でその試合を観戦する予定であった。
「試合の結果によっちゃ、俺たちにもまだ“優勝”の目はあるからな」
 双葉大学はこれで、4戦3勝1敗。次の対戦相手が法泉印大学なので、状況次第では前期優勝の行方は、プレーオフに持ち込むことが出来る。
「………」
 仁仙大学には、水野葵がいる。外からその姿を見ることは、初めてになる大和だが、多少の感傷を感じることはあっても、もうあの時のように、心を乱されることはなくなった。
「どうしたの?」
 桜子を見つめる大和。その視線に気がついて、桜子は最初はいぶかしむ様子を見せたが、ややあってすぐに笑顔になってくれた。
「なんでも、ない」
 その笑顔を見た瞬間、体が至福の感情で満たされて、“愛の言葉”がつい口に出そうになった大和は、まだベンチの中にいる自分の姿に気がつくと、慌ててそれを押し込めた。言っていたら、大変なことになるところだった。冷やかされて…。
「ふふ。ヘンな、大和」
 だが、その照れた様子は桜子にもしっかりと見えていた。
「あー、キミたち。そういうコトは、家に帰ってからしなさいネ」
 とても見ていられない。桜子と大和のやり取りに、雄太が手で扇ぐ仕草を見せる。
 しかし、その薬指には、試合中には外されていたドルフィン・リングが、まずは先に、しっかりと元に戻っていた。それは品子も、同様のことであった。
(うむ、熱いな)
 岡崎がひとり、誰に言うでもなく、そう呟いていた。彼に春は、来るのだろうか。
 …来る、と、言っておこう。


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