夏の1日と彼の優しさ?-7
美咲のその言い方は、まるで前にも同じような目にあったような言い方だった。事実、猛が訝しんで少しだけ美咲の顔を見てみると眉を顰め何かに嫌悪しているような表情。
「……今日は家まで送るよ」
「え?」
「そばに男がいれば少しでもそういうのはなくなるだろ」
猛の提案に思わず美咲が顔を少しだけ上げれば、少しだけ口角を上げて微笑む猛が見えた。その前髪に隠された瞳は窺えないけど、何故か優しく見つめられているような気がする。
「私なら大丈夫だよ。もう気は緩めない、そういう相手には容赦しないようにしてるから」
「…聞くだけだと怖ぇな。けどそうじゃなくて、嫌な目にあうこと自体嫌だろ?だから今日だけだ」
「ちょっと待って。何でそこまで?」
「これでも上代さんはオレのクラスメイトなんだから知らん顔は出来ない。それが目の前で起こってることならなおさらだ」
美咲の質問、猛はそう言い切った。何でそこまで、と思いながらも美咲は見えないその瞳の視線を受けて拒絶することが出来ない。猛の声は、言葉は、下心なしに本気で美咲を案じているものだと分かってしまったから。それでも、自分が弱いとは思ってない美咲は猛の言葉を安易に受け止めることが出来なくて目を逸らした。
「………勝手にすれば」
「おう、そうする」
美咲の暗に出た許可に猛はそのまま乗っかった。
そしてようやく目的の駅に着き、二人は揃って電車を降りて一緒にウォーターズタウンへと向かう。歩いて数分で行けるその場所に着くと多くの人たちが出入りしていて、2人はすぐに他の3人を見つけることは出来なかった。