嫉妬-9
「……でもさ」
不意に郁美は顔を少し曇らせた。
「あたし、一度修に振られてるから一緒にいても不安になるときがあるんだよね」
「……でも、ちゃんと話し合ってやり直すことにしたんでしょ?」
「うん……。でも、不安は不安。学校違うから修が普段どんなふうに過ごしているのかとか、仲のいい女の子はいるのかとか気になっちゃうの。ね、修って学校でどんな感じなの?」
ずいっと郁美が私の座っていたベッドの隣に座り、詰め寄ってきた。
郁美の小さな顔が近づくと、私はなんとなく目を逸らしてしまう。
「……いつも大人数で廊下で騒いでるよ。仲のいい女の子はいないと思う。あまり女の子と話しているの、見たことないし」
郁美の前では、昼休みに沙織達とよく四人で過ごしていることは口に出せなかった。
「そっか、よかったあ。じゃあ修は仲良くしてる女の子はいないのね」
少し後ろめたさはあったけど、とりあえず頷く。
彼にとって、私は恋愛対象外なのはわかりきっていたから。
「じゃあ、あまり心配しなくてもいいのよね。ホント、桃子にはお世話になりっぱなしだなあ。桃子も男の子苦手なのに、ちゃんと修と連絡取れるようにしてくれてあたしに協力してくれたんだもんね。でも修に話しかけるの、嫌だったでしょ。あの時は無理なお願いしてごめんね」
郁美に言われて初めて四人で遊んだときのことを思い出した。
あの時は、土橋くんも大山くんも印象は最悪で、金輪際関わりたくないと思っていたのに、今ではかけがえのない存在になっていることがやたら不思議に思えた。