嫉妬-7
静かになると、沙織はガタッと椅子から立ち上がって、
「そろそろ帰る?」
と、私を見た。
いつものような穏やかな笑顔を見せているけど、きっと私に気を遣っている。
私は黙って頷き、立ち上がって土橋くん達の方をチラリと見た。
レジの前で何か注文しているのだろう。
大きな背中を少し丸めて店員さんと話をしているのが見えた。
郁美はいつの間にか土橋くんの腕に自分の腕を絡ませ、一緒にメニューを覗き込んでいる。
…………。
平気なつもりだったけど、ああやって仲良く肩を並べている姿を目の当たりにすると、言いようのない焦りがこみ上げてくる。
だからといって私がやきもちをやくのは筋違いだし、平気だと以前沙織に言った手前、泣きつくわけにもいかない。
私はとにかく彼らが目に入らない場所に行きたくて、逃げるようにその場を去った。
その夜、夕食を終えた私は自分の部屋のベッドで横になりながら、携帯をいじっていた。
意味もなくアドレス帳を見ては、土橋くんの名前に一人でにやけたり、そんな自分に恥ずかしくなったりして、画面を閉じたりを繰り返していた。
それなのに、土橋くんと郁美が仲良く腕を組んでいた姿が、さっきから脳裏にちらついて仕方がない。
あの二人が一緒にいる所なんて考えたくないのに。
やっぱり、二人でデートしてる所を実際見ちゃうと、結構ダメージ大きいなあ。
土橋くんが私のことを好きだと言ってた沙織や大山くんの言葉は、勘違いしてはいけないとは思っていたけど、少し期待していた自分がいたのは確かで。
でもそれは本当に勘違いそのもので、私みたいな女は郁美に勝てるわけがないんだと今更ながら痛感させられた。
思いっきり深いため息をついていると、階下からインターホンの音が鳴り響いてきた。