嫉妬-6
郁美は土橋くんのブレザーの裾をクイッと掴み、上目遣いで彼を見つめた。
「修ってプリクラ集めてたの?」
「いや、そういうわけじゃないけど……」
「じゃああたしにちょうだい! あたし、最近桃子からプリクラもらってないし」
郁美はにっこり笑ってそう言うと、素早く土橋くんの持っていたプリクラをひょいと取り上げた。
そして、手際よく手帳をカバンから出すとプリクラをペタリと貼ったのである。
私も沙織も、そして土橋くんもびっくりした顔で郁美の手元を見つめていた。
あまりの早業に思わず見とれてしまったほどだ。
「おい、郁美……」
呆れたような声で、土橋くんは郁美を諌めようとするけれど。
しかし、郁美は悪びれる様子もなく、
「いいじゃん、集めてないならあたしにくれたって。……そうだ、代わりにあたし達もプリクラ撮って桃子にあげるからさ、ねえ修?」
と、明るい声で言った。
「ヤだよ、めんどくせえ。それより俺腹減ってるんだって」
「じゃあ、何か食べてからでいいからさ。ねー、お願い!」
「……はいはい。じゃあ、俺ラーメンのとこに並んでくるから。じゃあまたな」
郁美の勢いにおされ、土橋くんは小さく息をフウと吐くと、私達に小さく手をあげてから、ラーメン屋のテナントに向かって歩いて行った。
「あ、待ってよ修! じゃあね、桃子」
「うん……バイバイ」
私が力なく手を振ると、郁美はニコニコ笑って、
「そうだ、桃子。今日の夜遊びに行っていい?」
と私を見た。
「え……?」
「桃子にはいろいろお世話になったからちゃんとお礼言いたいし……なんて、ホントはただのろけたいだけなんだけど。多分7時頃に行くから、よろしくねぇ」
郁美は半ば強引に言いたいことを言い終えるとヒラヒラと私に手を振り、土橋くんの元に走り寄って行った。
そしてなんのためらいもなく彼の手を繋ぎ始めた。
土橋くんもそれを振り払うわけでもなく、手を繋いだまま静かに順番が来るのを待っていた。