嫉妬-4
「どうしたの? ボーッとしちゃって」
気付けば沙織がきょとんとした顔で、私を見つめていた。
私は慌てて、
「あ、ごめんごめん。私もこないだ友達とプリクラ撮ったんだー。だからあげるね!」
と、土橋くんのことを考えていたことを悟られないよう、わざとらしく明るい声を出し、カバンから手帳を取り出した。
「うん、ちょうだいちょうだい!」
沙織はにっこり笑ってそう言い、私の手帳に貼ってあるたくさんのプリクラを眺め始めた。
私がカバンからハサミを出して、下を向いて小さくプリクラを切っていると、
「俺の分もな」
と、頭上から聞き慣れた声が聞こえてきた。
私と沙織はハッと顔をあげると、カバンを小脇に抱えた土橋くんが、いつもの少し意地悪そうな笑顔で立っていた。
とっさにドキッと胸が高鳴る。
「修……、びっくりさせないでよ!」
沙織は本当に驚いていたようで、胸に手をあてていた。
「な、なんでここにいるの?」
私も突然のことに驚いていたけど、嬉しさが先立って声が少し上擦った。
「腹減ったから何か食いに来たんだよ」
彼らしい答えに笑いがこみ上げてくる。
そのような他愛もない会話を三人で少し交わしながら、私は切り終えたプリクラを沙織に渡し、戸惑いながらも土橋くんにも渡した。
「落書きとかしないでよ」
「そんなくだらねえ真似するかよ。……それにしても、お前プリクラの方が映りいいじゃん」
土橋くんはプリクラをまじまじ見てから、私にニヤニヤした顔を向けて言った。
「もう、うるさい! プリクラっていろいろごまかせるから映りよく見えるんでしょ!! そんなこと言うんだったら返してよ!」
私が彼の手からプリクラを取ろうとすると、土橋くんは素早くそれをよけ、サッとブレザーのポケットに入れた。
「ちげぇよ、いつもこんな映りみたいにニコニコしてろって事だよ」
「無愛想な奴に言われたくないし!」
そう文句を言いながらも、自然と顔はほころびにやけてしまう。
彼に悪態を吐かれても、内心喜んでいる自分はなんて現金なんだろう。
私って単純だなと思ったその時だった。