嫉妬-13
「ま、桃子も他に好きな人とか作りなよ。わざわざ人の彼氏なんか好きになんなくても他に男の子はいっぱいいるんだし」
郁美はすっかりいつもの調子に戻って、ポンと私の背中を優しく叩いた。
今の私にはそんな郁美の言動すべてに、トゲがあるように思える。
でも、反論できないのは郁美は土橋くんの彼女であるからで。
自分の彼氏が他の女と仲良くしてるのを、快く思わないのは当然だろうし、私もそう思う。
結局、彼女が“私の彼氏に近づかないで”と言えば、単なる友達はそれに従うことしかできない。
いつもの調子に戻った郁美は、普段どのように土橋くんと遊んでいるかとか、どんな話をしているかとかを頼みもしないのに詳しく教えてくれた。
沙織ののろけ話ならいくらでも聞けるのに、郁美の話は耳を塞ぎたくなるほど聞きたくなかった。
今の私は、とにかく郁美が早く帰るのを待つしかできない。
郁美の首筋につけられたキスマークがチラッとスウェットの襟元から見えるたびに、土橋くんが遠くに行ってしまったように感じた。