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鳥籠
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鳥籠-4

「今はね」

と、吟ちゃんがキッチンへ行ってから小さく呟いたことなどあたしは知る由もなかった。

ずるいわ、こんなの。説明もしてくれないなんて。
あたしはちょっとふて腐れた。
やっぱり吟ちゃんは性交不可な体なのかしら、そんなの嫌、と思う。

でも、無理に訊こうとしたりこっちから襲ったりしたら最悪の場合捨てられるかも知れない。吟ちゃんは優しいから分からないけど、断るには何らかの理由があるんだから尊重した方がいい。
なるべく気にしないようにしよう、と考え直した。

そして今日も、いつも通り2人で吟ちゃんの作ったおいしい晩ご飯を食べたあと、同じベッドに入った。

電気が消されて、真っ暗闇になる。
あたしは寝る前に吟ちゃんに話しかけた。
「吟ちゃん、起きてる?」
「起きてるよ」
「明日、大学お休みでしょ?」
今日は金曜日だから明日は土曜日だ。
「うん」
「じゃあ一緒にいてね。久しぶりにずっと吟ちゃんといたい」
吟ちゃんがあたしの方に顔を向けた。
「うん、いいよ」
「ほんとね。約束よ」
吟ちゃんのくすくす笑う声が聞こえた。
「鶫は小さい子みたいだな」
楽しそうに言う。
「失礼ね」
と怒った様に返しながらも、あたしが子供っぽいから吟ちゃんは手を出してくれないのかしら、それなら改善しなくちゃ、と思う。

じゃあお休み、と言って吟ちゃんがあたしにいつものキスをした。

明日が楽しみだ。
どこへ行けなくても良い。
―吟ちゃんといられるなら。


大好きな人の隣りで大好きな煙草の匂いに包まれながら、あたしは眠りに落ちていった。


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