第一夜-4
どこに行くのか。
今自分の手を引いているこの青年は誰なのか。
何もわからない。
ただ温もりと、懐かしさだけがそこにあって、それは琥珀の昔感じていた幸せな時間を呼び覚ましていた。
この青年は自分に危害を加えない。
理由こそ不明瞭であるものの、彼といると不思議と落ち着いている自分がいた。
彼が聞いたら怒るだろうか。
先ほど感じた兄の面影。
それが妙に嬉しくて、危うく命を落としかけたばかりだというのに口元は綻び、自然と笑みが浮かんでいた。