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追憶の欠片
【歴史物 官能小説】

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第一夜-3

どちらが仲間かはっきりと琥珀が判断した瞬間、琥珀は意を決して味方の懐へと飛び込んだ。

戦闘中不意に目に飛び込んできた一般市民と思われる少年。
いつもならば迷わずその場で斬り捨てていただろう。
しかし、なぜかその日はその少年を斬り捨てようとした瞬間身体が勝手に動いた。

それは、彼の後ろ姿のせいか。
凛としたそれは、華月のかつて愛した少女によく似ていた、いや、一瞬華月は少女がそこに立っているかのような錯覚に陥るほどだった。

それほどにまで彼女に似ている存在。
彼との出会いが、後に華月を大きく変えて行くことになる―…。

意志とは裏腹、少年を背に庇いながら華月は次々に目の前の敵を斬り捨てて行く。
その太刀筋には一切の曇りも迷いもなかった。

気を抜けば命を取られる。
その情報は、華月の中にしっかりと刻み込まれている。

―こんな場所でくたばってたまるかよ。俺にはまだ、やるべきことがあるんだ!!

華月の眼光が鋭くなる。

振り上げられる刃に思わずきつく目を閉じる。華月が剣を振り下ろした瞬間、視界が紅く染まった。

華月は剣を鞘に収め、静かに後ろを振り返った。
「死にてぇのか馬鹿!!」
「…え?」

ふと耳に飛び込んだ怒声に、少年はびくっと肩を震わせる。

「…俺、生きてる…?」
少年を怒鳴り付けた華月は小さくため息をつき、ガシガシと乱暴に頭をかくと、呆然と呟く少年の腕を引いてずんずんと歩み出す。その身は返り血を浴びて紅に染まっていた。

「あっ、あの…っ!?」
敵か味方かもわからない目の前の男に、少年―琥珀は戸惑った。
辺りが薄暗いせいで、彼の顔さえろくに見えない。
そんな状態で繋いだ手から伝わる彼の温もりに、兄…かつて自分がそう呼び慕っていた恩人の面影を感じて、不意に泣き出しそうになってしまい、慌てて唇をきつく引き結ぶ。


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