20 骨製の海底城 *性描写-3
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はるか昔、初めは仲良く暮らしていた魔法使い達が決別するきっかけは、あるものの奪い合いだったそうだ。
それは、金のトカゲの骨。
万物に力を授けたトカゲは、すっかり食い尽くされ、巨大な骨だけが残っていた。
始めは些細な口ゲンカが、次第に魔力を向け合い、派閥をつくり、争いは大きく大きくなった。
歴史上で最大最悪の戦と言われ、大陸でこの話を知らないのは生まれたての赤子だけだ。
殺され、殺し合い、最後に壮絶な戦いの末、地形までも変える爆発が起きた。
大きく削り取られた海岸から、海水はトカゲの骨があった荒野まで流れ込み、十数人の魔法使いと供に、トカゲの骨は海底に沈んだとされている。
その後、骨を発見したという者はなく、実は他の場所にあるとか、爆発で消し飛んだとか、無数の逸話が残るのみだ。
一緒に沈んだ魔法使い達は、皆死んだとされているが、それが間違いだと、エリアスは知っている。
ここから先の真実は、海底城に住む者だけの知識。
非常に優れた魔法使いだった彼らは、あえて骨ごと沈み、魔力を駆使して海底を生き抜き、トカゲの骨で城を作ったのだ。
骨になってさえ、金のトカゲはその身に絶大な魔力を残していた。
海底城を覆う膜は、ストシェーダ王都の膜と原理は同じだが、はるかに強力で城を完璧に多い隠す。
この城へ入るには、通信魔法で呼んでもらうしかない。
海底城で暮らし始めた魔法使い達は、城を満足いくまで完成させると、更なる目標に憑かれ始めた。
『不老不死』
誰もが一度は望み、叶わぬ夢に終わる目標を追い始めた。
これが叶えば、種の存続に悩む必要も無い。
自分達自身が、永遠の存在になるのだから。
だが、トカゲの骨からいくら知識を得ても、それだけは解らなかった。
無数の蛮族や魔法使いを攫って実験を繰り返した。
その間で、自分達へ奉仕させる使用人や玩具も作った。
ついには自分達自身も、不老不死の実験台にした。
二百年も若者のままでいた者、ゆっくりと歳をとりつづけながら数百年生きた者もいた。
それでもいつかは死ぬ。
そして限界を悟った海底城の魔法使いたちは、不老不死になりそこなった実験体たちを、大陸各地に送り込み、星の数ほど増えた魔法使いや蛮族から、様々な『知識』を集めさせた。
時には、特に優れた才能を持つ者を海底城の研究仲間に引き入れた。
エリアスがアレシュの元に送り込まれたのも、主の命令だ。
異常な執着心から生かされた魔眼王子は、エリアスへ非常に多くの知識をくれた。