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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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19 生まれついての大罪人-1


「……ですが、再会は無駄ではありませんでした」

 回想を打ち切り、アレシュは国王夫妻に重大な報告をする。
 本当は、どうしてジェラッド国にいたのか、カティヤに会ったその日に聞きたかった。
 だが野盗に犯されたという彼女に、過去をほじくり聞くのを躊躇い、なかなかきっかけが掴めなかった。
 そしてベルンが来る直前、ようやく聞けた、飛竜使いの長に拾われた時の話が、アレシュを驚愕させていた。

 マウリの報告と、まるで食い違っている。

 不審に思い、念のためカティヤにはベルンと一緒にいるように言い、エリアスと各方面から徹底的な調査をした。
 そして、最初からマウリはカティヤを殺す気だった事、そもそもゼノ地方などには行かなかった事が判明した。
 領地の城にも行ったが、数日前にあわただしく逃げ出した跡が残るだけで、本人は消えていた。ゼノに忍ばせていた諜者から、カティヤが発見された事を知ったのだろう。

「エリアスが調べました。マウリはカティヤが来る前から、領地で非合法な薬師を何人も雇い、薬品開発をさせていたそうです」

 アレシュに促され、エリアスが持参した書類を差し出す。
 受け取ったメルキオレが、厳しい視線を書類に走らせた。
 傍らのリディアも、心配そうに美貌を曇らせる。

 数名のうち、最後に記されていた薬師の名は、随分前から指名手配になっていた男で、数日前にゼノの安宿で死亡が確認されていた。
 しかし、調合法と効果、何より材料名に、メルキオレの視線がいっそう険しくなる。

「アレシュ……そなたの血が?」

「はい。治療研究のためと採血した分を、凍らせ保存していたようです」

 マウリの命令で、医師は毎日毎日、並みの人間であれば失血死している量を抜いていた。
 そして魔法で凍らせた血液は、治療研究などには使われず、そのままマウリの領地で運ばれ、アレシュたちが思いもしなかった薬品開発に提供されていたのだ。

「リザードマンの制御?ばかな……」

 効能の欄に、メルキオレが呻く。

 アレシュの血を使った薬は、最大の脅威であるリザードマンを意のままに操れる効力を持つと、記されていた。
 こんな薬を効果的に使えば、ストシェーダを国ごと乗っ取る事さえも可能だ。

「わかった。すぐに兵を差し向けマウリを探させよう」

 書類をしまい、メルキオレは立ち上がる。
 空の右袖が、ヒラリと宙になびいた。



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