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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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15 ジェラッド王都の朝-1

 ジェラッド国の王都は、大陸で一番賑やかな朝を迎えると言われている。
 朝早くから、鍛冶屋が鉄を打つ音が響き、魔法具を作製する錬金術師の工房は、煙突から色とりどりの煙を吐き出す。

 朝の賑わいは、王宮も同じくだった。
 ジェラッド城は、いくつもの尖塔をカラフルな陶磁器な飾った華麗な城だ。城砦としても優れているが、いかにも楽しげな色彩は、見ているだけで気分が浮き立つ。
 日の出とともに、城の煙突からもパンを焼くいい匂いが流れ、中庭では兵達が朝の訓練に勤しんでいた。

「はぁっ!!」

 掛け声と供に、カティヤが訓連用の槍を突き出す。
 先端は、刃の代わりに柔らかな布袋だが、まともに鳩尾へ喰らった騎士は、呻いて芝生に倒れこんだ。
 続いてカティヤは身体を反転させ、斜め背後からの槍を払い、二人目の足をすくい上げ、転倒させた。三人目はわき腹に、四人目はやはり足払い。五人目は正面から突き……。
 瞬く間に、屈強な五人の竜騎士団員は、芝生の上に寝転ぶ事になった。
 ようやく槍を地面に付き、カティヤは額の汗を拭う。

「うん。なかなかイイ動きになっていたぞ」

 倒れている男たちより、はるかに小柄で華奢な竜姫は、部下達にニッコリ笑いかけた。

「今日は王都のパトロールがある日だったな。すまないが、先に宿舎に戻る」

 槍を肩にかけ、機嫌よく歩き去っていく副団長の後ろ姿に、竜騎士団員たちはぼやく。

「誰だよ……留守中に特訓したから、今日こそカティヤさんを倒せるって言ったの……」

「悪かったな……五人がかりならいけるって、お前も乗っただろ……」

「つーか……そもそも五対一で勝っても、威張れないだろ」

「……だな」

 よろよろ芝生に座り込んだ竜騎士たちは、顔を見合わせ苦笑いする。

「まぁ、元気に帰ってきてくれて良かった」

 カティヤが突然姿を消し、あげくに団長まで、周囲が引き止めるのを振り切って遠いゼノ地方まですっ飛んで行ってしまった。
 上からは黙秘するよう言われていたが、トップ二人が不在とあり、竜騎士団はここ数週間、てんやわんやだったのだ。

 そして一昨日の昼すぎ、二人と二匹の飛竜は、隣国のアレシュ王子とともに、王城へ姿を現した。
 一体何があったのか、団員たちはもちろん興味深々だ。
 しかし、カティヤとベルンが話さない以上、無理に聞き出す気もない。
 特に、どこか憔悴した様子だったカティヤが元気を取り戻してくれたのなら、訓練であっけなく倒されるのさえ爽快だ。

「平和だなぁ……」

 一人が青空を見上げ、大きくのびをした。
 初夏に相応しい、雲ひとつない快晴になりそうだ。




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