新しいピアス-1
「千明さ・・・」
ピアスをしている耳を執拗に舐めてくる千明を
力任せに引き剥がすと
手の甲が金具で傷つくのも気にせずに拭った。
気持ちわりぃ。
付き合っていた頃
よく抱き合ってお互いの耳を舐めあった。
お互いがお互いの耳に存在しているかのように
ピンクの。確かピンクトルマリンの
透明なピンクの小さな石つぶを舐めあったのを思い出した。
けど今。ちあきに舐められた耳は
色っぽさを全く感じず、ただ気持ち悪いだけだ。
「よくのこのこ俺の前に帰って来れるじゃん」
千明に捨てられた直後。
もしもう一度会えたら。言いたいことがたくさんあった。
それは恨みとかそんな言葉じゃなくて
全てが未練たらしい言葉で。
今でも千明が好きだって伝えたいといつも思ってた。
目の前にいる女は
3年前より綺麗になって
3年前よりいい女だった。
でも今の俺が欲しいのは、あんたじゃないんだよ。
恋愛ってタイミングなんだな。
そんなことを俺が思うなんて可笑しくなった。
「今でも俺がほんとに千明を待ってるって思ってるわけ?」