新しいピアス-18
日付はとっくに変わっていた。
少し歩いたところであっと思って
唇を手の甲で拭った。
案の定、真っ赤な口紅が
その存在を主張するようについている。
「やっべっ」
このまま加奈ちゃんのところに帰ったら
危ないところだった。
ハンカチで丁寧に拭ってできるだけ明るく
自分のアパートのドアを開ける。
「加奈ちゃん。遅くなってごめん。
どうしても抜けられなくて」
電気をつけたままテーブルに突っ伏して
待ちくたびれたように眠る加奈が可愛い。
「吉岡せんぱ。お帰りなさい」
寝ぼけて潤んだ瞳も
目をこすりながらぽーっと話す口調も
何もかもが可愛い。
加奈ちゃんはぼーっと俺を凝視して
「寝る前にシャワーに入ってきたらどうですか?」
といい、自分はもそもそとベッドに入り始めた。
言うとおりにシャワーを浴び
Tシャツと短パンでベッドに入った俺は
なんだかとっても幸せな気分で
加奈ちゃんをぎゅーっと抱きしめた。
今夜はこの幸せを噛み締めて
セックスしないで寝よう。