新しいピアス-16
そこでハッと正気に戻った。
「ごめ・・」
「潤。気持ちよかった?大好き。
私たち元に戻れるよね?」
「・・・・・」
「あの時。ああするしかなかったの。
留学は潤と付き合い始める前から決まってたの。
行くなんて言えなかった。
潤の口から別れるなんて聞きたくなかった。
大好きだったの。今でも好きなの。
忘れられないの。お願い。もう一度やり直そう?」
あの時はああするしかなかった。
その言葉が虚しく響く。
他にやり方があっただろ!
でもそんなことは言えない。
俺たちは高校生という幼い感情と環境の中で
愛し合ってがんじがらめになった。
あの時には戻れないし
戻るつもりもない。
「千明・・・
千明には感謝してる。
俺を本気で愛してくれたって信じてる。
俺も本気で愛したよ。
でもな。
今は愛してない。
お互い、あの時のトラウマから抜け出そう。
千明は俺を置いていったという罪悪感。
俺は千明に捨てられたという劣等感。
もうお互いに開放してやろう。
千明も俺を好きだと思い込んでるだけだよ」
「本当に今でも好きなのよ」
「たとえ、千明が今でも俺を本当に好きだったとしても。
今の俺はあの時の俺じゃない」