夢と記憶-1
ファンの火山の頂上近く……午前中だけで何とかここまで登ったゼイン、カリー、スランの3人だったが、男2人が寝不足なのもあり、ここでダウン。
日が差し込まない場所を選んでの野宿となった。
体力の限界を迎え、崩れるように倒れたスランは、カリーに抱きついて寝息をたてている。
「……何なのよぅ……」
巻き込まれたカリーは岩に背中を預けて頬を膨らました。
スランはがっしりとカリーの腰に腕を回し、お腹に顔を埋めている。
まるで、泣き疲れた子供が母親にしがみついたまま寝てしまった様な構図にカリーは戸惑った。
「ははっ、俺とヤルの無茶苦茶嫌がってたからなぁ〜」
動く植物『ザルス』の樹液に侵され、生きる為に渋々ゼインを抱いたスラン。
それがトラウマになって、女の身体が恋しくなったらしい。
「ねぇ……何でスランを助けたの?」
まだ会って間もない……仲間とも呼べないような男に何故身体を差し出す様な事が出来るのか、カリーには理解出来なかった。
カリーしか知らない事だが、スランはポロの命を狙っている暗殺者。
正直、あのまま死んでくれた方が助かったのだ。
「俺にとっちゃケツを貸す事は苦痛でも何でもねぇしな……それに……」
「それに?」
「まあ、あれだ。お前が気ぃ許してるみたいだから……な」
どうやらゼインの目にはカリーとスランが恋仲に見えるようだ。
勘違いも甚だしい……死んでくれて構わないのに……カリーは思わずため息をついてしまう。
「ま、男とヤルより死んだ方がマシっつったら放置する予定だったが、コイツは生きる方を選んだ……なら、助けるさ」
他人に対しても生きる事に貪欲だなあ、と思いつつカリーはスランの頭に手を置いた。
このまま首を絞めて殺してやろうか、と首筋まで指を滑らせたが……ゼインが身体を犠牲にして助けた命だ……今の所は勘弁しておこう。
カリーはむにゃむにゃと子供の様な寝顔を見せるスランの髪を指で梳いてやった。
それは愛しい恋人を愛撫する姿に見えて……ゼインは視線を反らして2人に背中を向けて寝転んだ。
「見張りよろしく」
「うん。おやすみゼイン……お疲れさま」
ゼインに答えたカリーは彼の頭にも手を伸ばす。
スランにしているように自分にも愛撫してくれるカリーの手に、ゼインは気づかない振りをしてこっそりと甘えるのだった。
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熱にうかされた様に身体が熱い……霞んだ視界の端で灰色の髪が揺れている。
「!……っハっ…ふぅっ」
首筋に軟らかい唇が押し付けられ、ゾクリと身体が震えた。
まともに働かない頭と、まともに動かないクセに敏感に反応する身体。