夢と記憶-9
「そうは思えねぇけどなぁ」
「何で?」
「いや、だって……」
俺のを扱いた時の指の動きが……と、言いかけてスランは視線を反らした。
「……何でもねぇ」
嫌な事を思い出してスランは不機嫌になる。
「んだよ?言えよ。気になるじゃねぇか」
「うるせぇ!仕事しろチビ!」
「んだと?!」
何だか子供のような喧嘩を始めた男2人に振り向いたカリーは、呆れた顔で呟いた。
「なぁにぃ?仲良くなっちゃってさ。そんなに男同士は気持ち良かったのぉ?」
「「仲良くねぇし気持ち良くねぇ!!」」
男2人は声を揃えてカリーに怒鳴り、ハッと我に返る。
「……あ、そ」
怒鳴られたカリーは馬鹿にした顔で2人に言うと、作業を再開させた。
ゼインとスランはお互いの顔を見た後、視線を反らして頭を掻く。
((気まずっ))
忘れたい出来事程、中々忘れられない……いつか笑い話になる事を願いつつ、男2人も作業にとりかかった。
魔草で麻袋がいっぱいになると収穫修了。
摂り過ぎると次の分が育たなくなるからだ。
「途中まで降りて、残りは明日だな」
「帰りは速いわね」
崖を飛び降りれば良いから楽なのだが、身軽なカリーと違ってゼインは力任せの着地になるので足と腰の負担が大きくなる。
スランも身軽なので帰りの問題はゼインだけだ。
「ま、回復は早いからいいか」
治癒能力は半端ないので少しは無理がきく。
さあ、下りよう……と思った時、スランが空を見上げた。
空には1羽の鷹が旋回している。
「……知り合いか?」
知り合いって、何か変な言い方だが確かに知り合いだ。
「ああ、俺の相棒」
スランは指を口に当てて指笛を吹く。
ピイィーと清んだ音が響き、鷹が舞い降りてきた。
「!?」
しかし、いつもと鷹の様子が違う……勢いがあり過ぎるし、何より……。
「でかっ!?」
そう、鷹は異常に大きかった。
しかも勢いが衰えない。
「うわっ!!」
「きゃあっ」
ズガァンと盛大な音をたてて着地した鷹は、巨大な牛サイズ。
鷹を避けたゼインとカリーは鷹を見たままスランに問いかけた。