夢と記憶-8
「そこまで言われると照れるなぁ……」
ケイはポリポリと指で頬を掻いて、困ったように笑う。
「そんな良いもんじゃ無いけど、ポロがそうして欲しいなら喜んで」
ケイがポロの布団を少し捲ると、彼女は横にずれてケイのスペースを空けた。
ポロの横に滑り込んだケイは腕を差し出して、おいでおいでと手招きする。
その腕にそっと頭を乗せると、ふわりと身体全体で包み込まれた。
〈……あったかい……〉
「そっか……良かった」
(俺的にあんま良くねぇけど)
さっき、まざまざとポロの濡れ場を見たばかりだ……幼い外見のクセにやる事が無茶苦茶いやらしくてエロかった。
好きでやっていたワケじゃないのは分かっているが、どうしても想像してしまう。
(……生殺しだ……)
安心して寝息をたて始めたポロとは違い、若干腰が引き気味なケイは眠れぬ夜を過ごす事になったのだった。
火山に登り始めて3日目。
やっと3人は火口に辿り着き、安堵のため息をついた。
「アビィならあっという間なんだろうなぁ……」
いつもはファンの宮廷魔導師エンがパートナーの火の精霊アビィ(見た目はドラゴン)に乗って来ると言っていた。
空を飛べるなら急勾配の山道を登らなくていい。
ポロの枷を外してもらう為とはいえ、ぼったくられたかもしれない、とゼインは思った。
「魔草ってこれか?」
スランがしゃがんで足元にある紫色の花を指差した。
「んっとねぇ、似てるのがあるから間違えるなって言ってた」
カリーはウエストポーチから魔草の資料を取り出す。
「ええっとぉ……欲しいのは花の真ん中が黄色いの。白いのは痒くなるから触るなって書いてある」
カリーの言葉にゼインは顔をしかめた。
触るなと言われても花は小さい。
どうやって花の中心を確認しようか、とゼインは唸った。
「ゼインは細かい事苦手だもんにぃ〜?」
カリーはニヤニヤして胸の谷間から細いダガーを取り出す。
「私とスランでチェックしてくから、ゼインはそれを集めて〜おっけぃ?」
「……おっけぃ」
どうせ不器用ですよ、とゼインはぶすくれて荷物を降ろし、中から麻袋を引っ張り出した。
「チビ、不器用なのか?」
スランは懐から出したダガーを、これ見よがしに指でくるくる回して聞く。
「うっせ。チビって言うな」
ゼインはぶすくれたまま答え、カリーの示した花を摘んでいく。