夢と記憶-7
〈あ……ごめんなさい……〉
「良いよ。もっと教えてよ。ポロの事」
ケイは微笑んでポロの手を頬に移動させる。
〈そんな……教える程の事じゃ……〉
と言った途端、ポロの記憶が堰を切ったようにケイに流れ込んだ。
もの心つく頃には既に奴隷だった。
売り物になる10歳までは奴隷市場の雑用係。
12歳の時に幼女趣味の男性に買われ、15歳になるまでそこで飼われていた。
昼間はボロボロになるまでこき使われ、夜になると主人へのご奉仕。
他にも使用人の相手をさせられたり、同じ奴隷少女と絡まされたり……しかし、それはマシな方だったのだ。
成長したポロは転売され、買ったのがポロを18番と呼んでいた男。
初めの2年ぐらいはひたすら投薬されていた。
主に身体の治癒力を上げる薬……他にもあったが良く覚えていない。
その後がさっきのアレ……そして、カリーとゼインに拾われたのだ。
〈本当に……ごめんなさい……〉
見せる気は無かったのだが、頭に浮かんでしまうとケイに伝わってしまう。
特に触れている状態だと映像が鮮明だ。
「だから、謝らなくて良いってば。俺の方こそツラい事を思い出させてゴメンな」
思ってもいなかった……世の中にはこんなに暗くて酷い世界があるのだ。
〈ツラい……事ばかりじゃ…無いです〉
カリー達に拾われてからの日々は驚きの連続で、ポロの記憶を覗いたケイにも分かる程に輝いていた。
「……あの2人…焦れったいな……」
〈そうなんです……スッゴい…モヤモヤするんです〉
しみじみ答えたポロにケイはクスクス笑う。
もう大丈夫そうだと思ったケイは、ポンポンとポロの手を叩いた。
「奴らの事だけ考えてたら恐い夢は見ねぇかもよ?」
見方を変えると結構、滑稽で面白いとケイは言って手の力を抜く。
〈あ〉
「え?」
離れようとするケイの手を、ポロは引き止めるように握って、ブワッと顔を赤く染めた。
ー そばに居て。
ポロから伝わった思念に、ケイまでも顔を赤くする。
「あ、えっと……じゃあ……毛布持ってくるよ。俺、床で寝るし……な?」
だから離してくれ、とケイが手を引こうとしてもポロは離さなかった。
〈あ、あの……嫌じゃ…なければ〉
ー 一緒に寝て欲しい。
〈い…いやらしい意味じゃ……なくて……その……〉
「あ、うん。分かってる」
ポロにはケイの手がとても暖かく感じられて、心地良かったのだ。
ゼインやカリーから感じるものとは違う、まるでお日様に包まれたような暖かさ。