夢と記憶-10
「えっと……大きいお友達ね?」
「これが普通か?」
「んなワケねぇだろ?!何だ?!どうなってんだ?!」
スランは2人に答えつつ頭をガシガシ掻く。
サイズを無視すれば相棒の鷹だ。
卵から孵化させて仕込んだ……見間違う筈が無い。
「何があった?!」
悲鳴のような声をあげたスランに、鷹はクリッと首を傾げた。
『クウゥ……』
小さな声を出した鷹はクワッとくちばしを開ける。
ビュルルッ
「!!」
「わきゃっ?!」
「?!」
鷹の口から無数の触手が飛び出てきて、3人に向かってきた。
触手は赤黒く、つるりとした質感。
その動きは速く、3人は慌てて後方に飛び退く。
「変わったお友達!」
カリーは触手を避けて大きな岩の上に跳び乗った。
「俺だ!分かるだろっ!!」
スランの悲痛な叫びが聞こえているのかいないのか……鷹の口から飛び出た触手が一斉にスランに向く。
「!!」
次々と迫り来る触手は確実にスランを狙っていた。
容赦ない触手を走りながら避けていくスランはそのひとつをギリッと握る。
「…………!」
鷹とスランの視線が暫し絡まった。
スランは触手から手を離してそこから飛び退く。
「……分かった……」
小さく呟いたスランは腰からショートソードを引き抜いた。
「ちょっ…分かったって何が分かったのよぅ?!」
カリーは岩の上からスランに叫ぶ。
「お前らは手ぇ出すなよ」
カリーの問いには答えず、スランは触手を斬り裂きながら鷹に向かって走った。
触手は痛みを感じないようで、のたうちながらスランを追いかける。
「って言われても〜…ねぇ?ゼイン?」
ゼインに振り向いたカリーは、視線の先の彼を見てギョッとした。
ゼインは両膝と右手を地面につき、左手で胸辺りを掴んでいたのだ。
明らかに、過呼吸を起こしている。
「ちょっとちょっとぉ!何でこんな時にぃっ?!」
カリーは慌ててゼインの元に走り、ウエストポーチから皮袋を取り出した。