決行-1
〜第2話〜
あれから2週間、会社の同僚にはあれからどうなったとか、進展はあったのか。と、
聞かれますが、向井さんからの連絡もなく、やはり冗談だったのだと思っていました。
ところが、それからさらに1週間後の土曜日、向井さんからメールが来ました。
また、麻雀の誘いかなとメールを見てみると、
「例の話はどうなったかな?まさか忘れていないよね?」と、
やはり実現させるつもりだったのです。
ですが、俺は「妻にどう話したらいいかわからず」と返信すると。
「なに、正直に麻雀の賭けに負けた。一度でいいから向井さんの
相手をしてくれないか。と言えばいいじゃないか。もしそれで奥さんが嫌がれば
私も諦めるよ。残念だがね」
このメールにダメ元で言ってみるか。もし怒られても自業自得だと覚悟を決め、
仕事を終えて、帰宅し妻の手料理をいつものように食べながら、遂に話をした。
「恭子。怒らずに聞いてくれ」
意識はしていませんが、恐らく珍しく緊張し声が震えていたでしょう。
ただならぬ俺の態度に妻も背筋を伸ばし。
「ど、どうしたの改まって。会社クビにでもなった?」
妻も何とかこの空気を和らげようとしてくれたのでしょう。そして話を続け。
「じ、実はな。この前の麻雀で向井さんとある賭けをしたんだ」
それを聞いた妻はそんなに深刻な話しじゃないんだと肩の力を抜き耳を傾けた。
「そんなに大金を賭けてるわけじゃないんでしょ?何を賭けたの?あなたが負けたの?」
早く先を知りたい妻は矢継ぎ早に質問し、
「お、お前を・・・賭けたんだ」
乾いた喉をビールで潤し、アルコールの力も借りて伝え、妻の顔を見た。
「わ、私?一体どういうことなの?」
意味もわからずキョトンとする妻にこの前の麻雀の話をした。
俺が負けたら向井さんに前から気に入っていた妻を抱かせる。と。
そして俺が負けた事を・・・離婚と言われるかもしれない。自分を賞品のように扱った事に怒り軽蔑しているだろう。
恐る恐る妻の顔を見てみると。無表情で俺をじっと見ていた。
「なるほどねぇ。この前のあなたの変な言動や行動にやっと納得したわ。
そういう事だったのね。私にあなた以外の男に興味があるかって聞いたのも
そのせいだったのね」
全く女という生き物は恐ろしい生き物だった。
何週間も前の何気ない会話を覚えているとは。
「恭子が嫌ならこの話はなかった事になるんだ。まぁいくらか代償は払う羽目になるがな。
すまん。お前の事を考えないで、勝手な事をして。
お前の体を褒められて、羨ましいとか言われて調子に乗ったのかもしれないよ」
正直に答えると、怒った風もなく。
「向井さんって、何回かしか会ったことないけど。へぇ、私のことそんな風に見てたんだ。
私もまだまだ女として捨てたもんじゃないってことよね」
怒るどころか気分よくしている妻は
「一度だけで博くんは救われるんだね。博くんが嫌じゃなかったら、
私、我慢してもいいよ。年上だし、そんなに長くならないでしょ?」
今の話で妻がオッケーしたこと、そして俺と同じく性にそんなに強くないだろうと
妻も感じているようでした。
俺は妻が他の男に抱かれるのはもちろん嫌でしたが、見知らぬ男に浮気されたり、
向井さんに無理矢理される事を考えると、まだ我慢できる(自己中な考えですが)範囲でした。
それに、うまくいけば向井さんの奥さんを抱けるかもしれない。と、悪い男の部分もありました。
翌日、早速向井さんにメールしました。
「この前の話ですが、妻をなんとか説得する事ができました。後はどうすればいいですか?」
すぐに向井さんから返信があり、「そうですか。とても嬉しいです。実は来週の土日、妻が友達と旅行に行きますので、私一人になります。奥さんの都合さえよければ、土曜の夕方か夜にしませんか?」
向井さんはこのタイミングを見計らって連絡してきたのだと思いました。
特に断る理由もなく、それに早く済ませたいという気持ちもあり、仕事から帰ると
妻に今度の土曜の予定を聞きました。
「私?んん〜別に用事もないし、いいよ。でも、本当にこんなことあるんだね」
「やっぱり嫌か?嫌なら今でも間に合うぞ?」
「ううん、そうじゃないの。なんかドキドキしちゃって。向井さんに抱かれても
私の事、嫌いにならないよね?」
「当たり前じゃないか。俺の方こそすまん。嫌いにならないでくれよ」
何故か大事な娘を嫁に出す父親のような気分になり、とても妻が愛おしく感じ、
その夜はどちらからともなく求め合い、愛し合いました。
「恭子。愛してるよ」
「私も・・・博くん。愛してる」
若いころに比べやや衰えた肉棒を正常位で貫き、腰を振り抱きしめながら。
「アンッ・・博くん・・イッちゃう」
「はぁはぁ・・・俺もだよ。恭子」
そんなに時間は長くありませんでしたが、新婚当初のような言葉を交わしながらの
セックスを楽しみました。