決行-3
「まさかまだやってるなんて事ないよな。きっと向井さんが疲れて寝てしまったんだろう。
朝には帰ってくるだろうし、もう寝よう」
結局ご飯も食べず、パジャマに着替え寝室のベッドに横になり、無理矢理寝ようとしましたが、さっき寝た事もありなかなか寝付けず悪い事ばかり考えるようになりました。
後1時間して帰って来なかったら電話しようと思っていた矢先の、夜中の1時頃。
カチャ・・ガラガラ・・
カギの回る音と扉が開く音。俺が寝ていると思い静かにドアを閉める気遣いが伝わる妻の行動。
無事に帰って来てくれた事に、無性に嬉しかった・・・と同時にこんなに遅くなった事に少し腹が立ち、このまま寝た振りをしました。
耳を澄ませて妻の行動を推理しながら、このベッドに来るのを待っていました。
程無くしてシャワーの音が聞こえてきました。
妻が帰って来たことで安心したのか、急に睡魔に襲われましたがなんとか妻が来るまでと
頑張って起きてました。
シャワーも終えて、パジャマに着替えた妻はできるだけ足音を立てないように歩き、
ようやく寝室にやってきました。
そっと布団をめくり、ほのかに石鹸の香りと上気した身体が近づいて来ました。
妻に背を向けた状態で寝た振りをしていた俺に、ぴったりと体をくっつけてきました。
妻の体温を感じていると「あなた、ただいま。遅くなってごめんなさい。って寝てるよね」
このまま寝た振りを続けようか迷ったものの、「んんっ・・おかえり。今何時だ?」
と、今起きたような寝ぼけた振りをして背中を向けたまま返事をしました。
「あっ、起こしちゃった?えっと、夜中の2時過ぎ。こんなに遅くなるなんて思ってなくて・・・怒ってる?」
正直腹は立っていましたが、俺に怒る権利などなく。元はと言えば全て自分の責任。
妻に責められる事はあっても、妻を責める権利などこれっぽちもありませんでした。
「怒ってなんかないよ。無事に帰ってきて安心したよ。やっぱり・・抱かれたんだよな?」
しばらく沈黙の後。妻が抱きつくように腕を伸ばしてきて。
「うん。最初で最後の・・・博くん以外とのセックス。向井さんって色んな意味で
予想外だったよ。もし博くんが聞きたいんなら明日話すね。
今日はもう疲れちゃった。おやすみなさい」
ギュッと甘えるようにくっついてくる妻から出てきた言葉に、驚きを隠せませんでした。
少なくともすぐに終わって向井さんが疲れて寝たためこんな時間になったという事はなく、
俺の知らない濃密な時間を二人で過ごした事がわかりました。
麻雀だけでなく、男としても負けた気分でしたが、なぜか妻の声や僅かな話を聞き、
身体は興奮し、ズボンの中は痛いくらいに勃起してました。
「うん。おやすみ」
そう返すのがやっとでした。気づくと妻は既に寝息を立て、俺もようやく深い眠りに着きました。
つづく。