秘密-1
同情のような、哀れみのような視線が私に注がれている。
でもその視線はどことなく私を責めているような気もして、私は目を泳がせながら俯いた。
「……ひどいよ、修」
沙織が泣きそうな顔で大山くんのブレザーの裾をグイグイ引っ張って体を揺すった。
大山くんは自分が悪いわけじゃないのに申し訳なさそうに下唇を噛んでいる。
―――ほんの数分前、私達はいつものように四人で集まりくだらないおしゃべりをしながら昼休みを過ごしていた。
正直、土橋くんに会うまでは、どんな顔して会えばいいのか悩んでいて。
おめでとうって笑って言えるのか、それが不安で顔を合わせづらく、朝からなるべく顔を合わせないようにしていた。
でも、昼休みになると彼は大山くんと一緒に私のクラスに現れ、いつもと変わらず憎まれ口を叩いてきた。
あまりにいつもと変わらない様子に思わず拍子抜けするほど。
でもよく考えたら、彼にとって私はただの友達だからいつもと変わらない態度で接してくるのは当然のことなのだ。
私だけが変に意識して一人で気まずく思っているだけで、彼は何も変わっちゃいないのだ。
だから、私も今まで通りでいなければ。
どこか釈然としない気持ちを押し隠して、私も負けじと憎まれ口を叩く。
そんな私達のやり取りを見て、沙織と大山くんが笑う。
うん、いつも通りだ。そう思っていたのに。
お昼を食べていた時に土橋くんの携帯にかかってきた電話が、今の気まずい状態を引き起こしたのだ。
「修、誰から電話なんだろうね」
沙織が言うと、大山くんはギクリと顔を強ばらせて俯いた。
……大山くんは、知っていたんだ。
多分、それを沙織や私に言いづらくて黙っていたのかもしれない。
大山くんの気遣いが少し嬉しくて、私は目を細めて彼を一瞥してから、震える唇をゆっくり開いた。