秘密-3
私達三人は、以前大山くんが沙織に告白した空き教室へ入った。
机も椅子も綺麗に並べられていて、そのまま授業が始められそうな教室。
私達は教卓の横のわずかなスペースに円を囲むように座った。
冷たい床の感触に、思わず身震いしてしまう。
座り込んだまではよかったけど、みんな黙ったままで重苦しい空気だけが漂っていた。
すっかり寒くなって、弱々しく感じる太陽の光が場違いのように私達に優しく降り注いでいて。
そのうち、沈黙を破るように予鈴が鳴り、ややもすると廊下がザワザワ騒がしくなった。
「あー……、予鈴鳴っちゃったし、戻ろうか?」
私はわざと明るい声を出して二人を見るけど、沙織は下を向いたまま黙っているだけで、大山くんは彼女の背中にそっと手を置いて静かに首を横に振るのだった。
「……多分沙織はこのまままともに授業に出れないよ」
大山くんの言葉を聞いて、沙織の顔をよく見れば、目を真っ赤にして涙をジワリと滲ませている。
「……沙織」
フゥッと小さく息を吐きながら、私はなんと言って沙織を納得させようか考えていた。
「大山くんは、知ってたんでしょ?」
「うん……、今朝聞いた。でも、今でも信じられないよ。オレだって修は石澤さんのこと好きだと思ってたから」
大山くんまでそんなことを言うので、私は呆れた顔を作り、
「二人とも勘違いし過ぎ。だって直接土橋くんから聞いた訳じゃないんでしょ」
と、笑い飛ばしてみせた。
「それはそうだけど、でも見てたらわかるだろ!?」
大山くんは口を尖らせてやや強い口調を私に向けた。
「じゃあ、何で郁美とヨリ戻すの?」
私の言葉に大山くんはグッと黙り込み、抱えた膝におでこをくっつけた。
「……土橋くんが郁美とやり直したのが答えだよ。彼は私のこと、なんとも思ってないの。私だって土橋くんのこと、友達以上の気持ちはないしね。それに私は土橋くんとも友達だけど郁美も大事な友達だし、……これでいいの」
私は、いつの間にかヒックヒックと嗚咽をもらして泣いてる沙織の肩にポンと手を置いた。