秘密-2
「多分彼女からだよ、昨日のさ。なんかやり直したみたいだよ」
哀れに思われたくなくて、私は思いっきり笑顔で言った。
「え……嘘でしょ!?」
沙織はびっくりして大山くんの顔を見るけど、彼は沙織の顔を見れずに下を向く。
「よかったよね! 郁美もずっと土橋くんとやり直したかったんだし、私もそうなって欲しかったし」
「だって……そしたら桃子は……?」
沙織は私の顔を心配そうにじっと見つめている。
やがてその大きな瞳が、みるみるうちに潤んできた。
私は机の上で組んだ手をじっと見つめる。
「さ、沙織……落ち着いて」
大山くんがオロオロしながら沙織をなだめようとするけど、沙織は彼のブレザーの裾を掴んで、一言、
「……ひどいよ、修」
と、呟いた。
泣き出しそうな沙織とは裏腹に、不思議と彼女が感情的になるほど自分は冷静になれた。
そしてなんとか慰めないといけない気になって、私はそっと沙織に笑いかける。
「沙織、前も言ったけど私と土橋くんはただの友達で、本当にそれだけなの。だから、私は本当にあの二人がヨリ戻してよかったって思って……」
「嘘!」
しかし、沙織は大きな声で私の言葉を遮り、睨みつけるようにこちらをジッと見た。
クラスメートが何人か沙織の声に驚いて私達の方を見る。
机に突っ伏して寝ていた男子も飛び起きて、びっくりした顔をこちらに向けている。
思わぬ所で注目を浴びてしまい、私も気まずくなって下を向いてしまう。
すると、ずっとオロオロしていた大山くんが、意を決した顔で、
「場所変えて話そうか」
と、椅子から立ち上がって私達の顔を見た。