思わせ振り-1
「そ、…そっか!頑張れ!剛志なら大丈夫だよ!」
私には古くからの友人が居る。
槙原剛志。
彼とは小中高と学校が一緒だった。遊び相手はいつも彼で、体が弱く病弱な私にいつも優しく接してくれる彼に、いつしか私は淡い恋心を抱いていた。
学校の帰り、剛志は私に相談を持ちかけた。
『好きな奴がいるんだ』
そんな話を聞いて私の答えた言葉が冒頭の台詞だ。
「真紀、応援してくれるんか?」
「あったりまえじゃん!」
強がりを言う私。
やだって言えない。素直になれない。
下唇を噛んで私は自分の気持ちを押し殺す。
「で、いつからなの?」
「いや、小学校からなんだけどな…」
「そんな、前から?」
もしかして私の知ってる人?
「ああ、うんそんな前から。…お前もよく知ってる奴だ」
「へぇ…そ、そうなんだ」
私の知ってる人。
もしかして…私、とか?
そんな都合の良い話があるわけない。
私は頭を振り自分の甘い考えを否定する。
「でもそいつはなぁ…」
「な、なに?」
「俺のことただの友達としてしか見てない気がす」
「そんな事無い!」
剛志の言葉を遮って私は声を張り上げていた。
「ま、真紀?」
不思議そうな剛志な顔が私の顔を覗き込む。
「い、いや、その、そんな気がしただけ!」
「そ、そうか」
微妙な空気が二人の間に流れる。
馬鹿だ。私は剛志が好きな相手が私の事だと勝手に思い込んでる。
そんな事…あるわけないのに。
「そっかぁ。じゃあ脈あるかな」
「分かんないけど、でも、ほら、剛志いい奴だからさ!上手くいくよ!保障する!」
「保障だぁ?失敗したらどうすんだコラ」
笑いながら剛志は言って私の頭に軽く拳骨した。
「責任とるよ」
私も笑ってそう言った。
「責任ねぇ…。こういう事なんだけど」
剛志は私の肩を掴んで私を引き寄せると、唇を押し当ててきた。
ファーストキス。
剛志の唇が私の唇に。
涙が溢れ、剛志の首に腕を回してしがみつき受け入れる。
どれくらい時間が経っただろう。
どちらともなく唇を離すと、息を吐く。
「ずっと好きだった」
「…ばか」
「ごめん」
「ズルい…こんなの」
「抱いていい?」
「ばか」
「俺んち来いよ」
私は頷いて彼の家に。
生まれたままの姿に。
「好きだよ、剛志」
「俺もだ、真紀(マサノリ)」
『アッーーー!!』
完