俺と美鈴と本マグロ-1
「明けましておめでとうございます。今年も宜しくね」
美鈴はそう言うと今年1番の笑顔を俺に見せた。
「こちらこそ宜しく」
俺は目を伏せてそんな風に返す。
どうも緊張してしまう。付き合ってからもう二年も経つというのに、美鈴の笑顔はいつ見ても綺麗で可愛くて緊張してしまうのだ。
「もうお正月。時間経つの早いね、隼人」
「ああ、そうだね」
静かな海岸沿いの道路で0時を回って、俺達は暗い暗い海を眺めてる。
「寒くない?」
そう聞くと美鈴は「少し寒いかな」と言って首を竦める。
俺は懐から鮪(まぐろ)を取り出すと頭からかじりついた。
なかなか旨い。
「来年もこうして二人で新年を迎えたいな」
そう言う美鈴は鼻の先が寒さで紅くなっていて、やけに色っぽく感じた。
俺はすぐに目を逸らして鮪をかじる。
なかなか旨い。
「貴男のこと、私ずっと好きだから」
恥ずかしいことをさらっと言う美鈴。
俺はおもむろにズボンを脱いで、寒い。
「おひょん」
美鈴がくしゃみしたから俺のパンツを頭に被せてあげた。
「暖かい…」
美鈴が微笑む。
俺も寒い。
海がとても暗くて綺麗だった。
完