一夜-1
時刻は夜8時を回った。
簡単な夕食を済ませて、一緒にお風呂へ入る。
汗と婬液でベトベトになった身体をお互い洗いあう。
寛人さんの性器にたっぷり泡を付けて丹念に隅々まで洗うと、すぐに硬くなった。もう私が触るだけでも寛人さんの雄は猛り狂う。
寛人さんも負けじと私の秘裂に指を這わした。
「あ、駄目。こんなところで」
そんな言葉は何の抑制効果も無い。
雄の猛りを鎮める方法など一つしかないのだから。
寛人さんは私の頭を掴むと強引に膝まずかせて、顔の前に硬くなった一物を晒す。
私はシャワーで泡を流すと、求めるままにゆっくりと口に含んだ。
風呂場は音が反響する。
じゅる、じゅると、婬棒をしゃぶる卑猥な音が耳の奥を刺す。私の鼻から洩れる淫靡な吐息と、快楽を貪る寛人さんの小さな喘ぎ声までも拾って、風呂場全体の雰囲気が桃色がかる。
「続きはベッドだな」
ちゅぽんと音を鳴らして剛直なペニスは私の口から引き抜かれた。
また私はお預けをくらった犬のように切なげな気持ちを抱いてしまう。
そして同時にこれから送られるであろう甘美な夜に期待を募らせてしまってもいる。
あのおちんちんで、今夜はずっと…。
そう考えただけで私の下腹部は熱を持ち、膣内がじんわりと濡れた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
お互い身体を拭くと、裸のままにベッドへ移動した。
服を下着を身に付ける必要がないから。
どうせ脱ぐことになるのは分かってるから。
「脚を拡げて」
寛人さんの命令。
もう私には逆らう力も意味も理由も無い。
ベッドに座ると私は脚をM字に拡げて恥態を晒す。恥ずかしさに顔を背けても、それは全部見えてしまっている。
羞恥心は気分を高揚させた。マゾヒストの私にはこの羞恥心が堪らなく興奮してしまう。彼がそれを見抜いたのかどうかは分からないけれど、彼の言動は一々私の性癖を上手く擽る。
寛人さんは私の股間に顔を寄せるとひだを丹念にいじくりだす。
くちゅくちゅ、ねちょねちょと卑猥な音が無音の部屋に響いてやまない。
「濡れてるね」
そう言って濡れた秘裂に舌を這わす寛人さん。
構わず嬌声が上がる私。
クリトリスを剥かれて剥き出しになったそれを舌の先でチロチロ刺激される。ひだを拡げて膣口を覗かれて、膣内に舌を侵入させる。
たっぷとクンニリングスを堪能した頃、私の身体はもうふやけるほどにとろけていた。
軽く二回はイってしまった。
もういい。早く、挿入れて。
頃合いと見たのか、寛人さんは私の膣内に挿入ってきた。
再びの性交。
私の雌としての順応力は高かった。のし掛かる寛人さんに腕も脚も絡めてしっかりしがみつき、強く激しく打ち付けられる男根を享受する。パンパンパンと乾いた肉のぶつかり合う音と、グチュグチュと水っぽい婬液の絡み合う音と、私の絶叫。
今この部屋に人間は居ない。
飢えて渇望した獣が二匹居るのみ。
「アッアッアッアッ!」
「瑞穂、いいよ瑞穂」
「私も、私もぉ!寛人さんの凄いっ!」
「すっげぇ濡れてるよ、瑞穂のまんこ」
「や、そんな言い方しちゃ」
娼婦?売女?
とにかく私は寛人さんを悦ばせるだけのオンナになりたかった。おかしいと思う。
今まで見下していた女に私は成り果てている。彼女達と私の差は何だろう?金銭の発生の有無?性技の差?
いずれにしても男を悦ばせる事を生業としている職業だ。
私はーー寛人さん専属の娼婦となってもいいと、其れくらいの気持ちを抱き始めている。
「ちんちんいいの!寛人さんのおちんちんいいの!」
エッチな言葉を口にすればするほど、男の人は悦ぶ。そう聞いたことがある。
肉体的に技術的に敵わない私は、精神的に満たすことを優先した。
「ちんぽ、だろ?」
「え、そんなっアアンッ!」
恥じらい躊躇いは女に必要な要素でもある。
加虐嗜好な男にはそれさえもスパイスとなってSEXに張り艶を持たせる。
全部、女性誌の受け売りだけれど。
「言えよ」
「ち、ちんぽ…」
「聞こえない」
「ちんぽ、いいの。寛人さんのちんぽいいの!ンッアッアン!」
はしたないセリフを口にして、私はどんどん奈落の底へ堕ちていく。
「康平のちんぽとどっちがいい?」
「ッ!」
私の時が止まる。
まさかここで、康平の名前を出されるとは思わなかった。半ば寛人さんに堕ちかけている中で、私の意識は強制的に現実へと引き戻された。
聞かれるまでもなく、寛人さんの男の方が遥かに立派で逞しくて持久力もある。勝負にならない。私の女がそれを認めてしまっている。
でも、それを言ったらいけない気がした。ただでさえ身体を許しているのに。寛人さんは私の心までをも奪うつもりなのか。それとも試すつもりなのか。
寛人さんは私の動揺を悟ったのか、ズグリと私の最深部まで雄を突き刺す。
ただそれだけで私の子宮は歓喜に震え、思考を掻き乱す。
「あっ…がっ…!」
「どっちがいい?」
言えない。言っちゃ駄目。
寛人さんのちんぽは気持ちいいと伝えたのに。それだけでは足りないの?誰かと比較しなきゃ許されないの?
ゆっくりと引き抜かれ、またズンッと奥の奥まで突かれると、私の全ての過去は忘却の彼方へとーー
「寛人…さ…」
「なぁに?聞こえない」
「寛人さんのちんぽが…いい」
「康平のより、だろ?」
寛人さんは止めを刺すように強く深く刺し込む。
「アアアッ!」
「言えよ!」
「い、いい!康平のちんぽなんかより寛人さんのちんぽの方がいいの!康平の早濡短小ちんぽなんかより寛人さんのでっかいちんぽがいいのぉっ!」
「ははっ、言ったな?とんだ淫乱女だな」
誰か、助けて。
私が私で無くなっちゃう前に…誰かーー