生きる術-9
「や……べ……」
スランの膝がガックリと崩れて、腕の中のカリーが放り出された。
「きゃんっ!いったぁ……」
カリーは涙目で打ち付けたお尻を擦る。
裸で溶岩石に転がされれば痛いのは当たり前だ。
「おい、大丈…夫……か……」
ザルスに止めをさしたゼインはスランの様子を見てため息をつく。
「……どれぐらい口に入った?」
「ハ…知らん……」
スランは口を押さえてくぐもった声で答えた。
薄めたやつを何度か飲んだ事はあったが、これは快楽じゃなく地獄だ。
身体中、異様に熱くて全身が心臓になったかのような錯覚に陥る。
「カリー。今日は1人で良いよな?」
ゼインはガシガシと頭を掻いて、カリーに向かってシッシと手を振った。
「良いけど、ヤッちゃった方が早く抜けるんじゃない?」
この手の薬は欲望に従った方が早く抜ける。
自分を庇ってくれた結果なのだから、責任を感じるのだ。
「この状態でそれをやったら、ガバガバどころじゃなく壊れるぞ?」
吐き出しても吐き出しても治まらない欲望に、気を失う事も許されない疼き。
使い捨ての女が10人は必要だ。
「う……」
さすがにそこまでしてやれる程スランに義理は無い。
「自分のミスだ……自分で何とか……する……さ」
スランは絶対にカリーを視界に入れないようにして身体を起こした。
今、ちょっとでもカリーを見たら獣のように襲いかかるだろう。
「俺がついてる。大丈夫だ」
ゼインは指を口に当てて、カリーに声を出さないように合図した。
多分、声を聞いただけでも理性が吹っ飛ぶ筈だ。
「俺は経験がある……だから大丈夫」
そう言ったゼインはひょいっとスランを肩に担ぐ。
「あ゛?こら、離せ」
「動けないクセに文句言うな。カリー、飯食ってゆっくり休んどけ。いいな?」
間違っても追いかけてくるな、というゼインの念押しにカリーは頷いて踵を返した。
ここはゼインに任せた方が賢明だ。
スランを担いだゼインは急勾配の山道をものともせずに歩みを進める。
大体、30分ぐらい進んだ所にさっき見つけた窪みと似た場所を見つけ、そこにスランを降ろした。