生きる術-2
「しっかし、良く王様が許可したな」
言い方は悪いが、ファンの姫なら引く手あまたで、もっと良い条件で売れただろうに、とスランが話に割り込んだ。
「それがさぁ〜姫様の相手ってのがくせ者でな、姫様と結婚する為にわざわざ『ゼビア次期国王代理』っつう、実質ナンバー2の地位を手に入れたんだと」
良く分からない地位だが国のナンバー2なら、ファンも文句は無かったようだ。
「へぇ〜♪禁断の恋、貫いちゃったんだ?やぁん♪そういう話好きぃ〜♪」
カリーは両手を組んで目をキラキラさせる。
「で?姫様が変わり者って?」
話を途中で遮ってしまったゼインが話を元に戻す。
「そう!うちの姫様って無茶苦茶強いんだよ」
「カリーも強いぞ?」
何故かゼインは張り合うようにカリーをアピールする。
「カリーがどれだけ強いか知らねえけど、うちの姫様はこの間の魔物襲撃ん時、全大陸の王様抑えて総指揮とったんだぜ?凄えだろ?」
それは凄い……確かに凄いが……お姫様がそんなに強くて良いのだろうか?
「……そりゃ、相当マッチョな姫なんだろうな……」
ゼインはファンの実態に軽く頭痛をおこして、こめかみ辺りを指で押さえた。
「ムッ、姫様は姫様の格好の時は超綺麗だぞ?」
ケイは褒めてるのか馬鹿にしているのか分からない事を言うと、壁に掛けてあった額を取る。
「ほら、ちょっと小さいけど真ん中のピンク色のドレスのが姫様」
ケイが差し出した額の中には写真が収まっており、その写真には10人ぐらいの人物が写っていた。
ケイは勿論、クインやエン、一番大きく写っているアビィ……そして、噂のお姫様。
お姫様はシンプルなピンク色のドレスを着て穏やかに微笑んでいる。
「おお、確かに美人だなぁ」
額を見ていたゼインとカリーの頭上から覗き込んだスランが口笛を吹いて認めるぐらいの美人だ。
「だろ?」
自慢気に胸を張るケイだったが、ゼインとカリーは何故か難しそうな顔をしている。
((何処かで会ったような……?))
2人共通の思いだったが、まさか姫様に会った事があるなんて事はないよな?と、2人して気のせいにした。
それから色々準備をした後、ゼイン、カリー、スランの3人は火山へと旅立った。
ポロは自分も行くと伝えたがあっさり却下。
体力も無く、腕力も無い……怪我を治す以外に特技も無いので足手まといなのだ。
分かってはいるが、自分の為に2人(ついでにスラン)が危ない場所に行くのに何も出来ないのが歯がゆい。
「ポロ。行こう」
ゼイン達の姿が見えなくなるまで見送っていたポロは、ケイの声に振り向いて店に足を向ける。
後ろ髪を引かれる思いだが、やれる事をやるしかないようだ。