生きる術-13
「……は…く……」
「ハァ…ハァ…」
呼吸を整えつつ2人の男は思う。
「「……やっぱ、女が好きだ……」」
声を揃えて呟いた2人はブハッと吹き出し、大笑いしたのであった。
それから、スランが完全に落ち着くのに夜中までかかった。
翌日、温泉に入ってからカリーの所に戻ると彼女は呑気に寝ていた。
それを見た男2人はイラッとする。
元はと言えばカリーがザルスなんかに捕まるからいけないのだ。
それなのに涎まで垂らして寝やがって……2人は同時に足を出してカリーを軽く蹴る。
「ふにゃ?!……んぅ……お帰りぃ〜…」
カリーは2人に気づくと身体を起こして、うにうにと目を擦った。
「いい気なもんだな?人が大変な目にあってるっつうのに?」
スランはそのまま足でカリーがくるまっていた毛布をはぐる。
「やんっ」
「ホレ、朝の涼しい内に登るぞ。今日は昼から休憩だ」
昼間は陽射しが強いので、地熱とのダブルパンチがキツいのが昨日の山登りで良く分かった。
それに加えて男2人は寝不足……昼まで頑張って、今日はもう寝る。
「はぁい……」
カリーは素直に言う事を聞いて荷物をまとめた。
こうして3人は過酷な山登りを再開するのだった。
街の方では7日後に行なわれる祭りの準備が進められていた。
ケイは街の青年団を仕切る立場にあり、朝から大忙しだ。
ポロの方はというと、店先で母親と一緒に街を飾る華飾りを作っていた。
「そう、その糸はこっちだよ……上手い上手い」
あらかじめ作っておいた華飾りを糸で繋げる作業。
こういう細かい単純作業はポロの得意技だ。
ポロの頭にはクインがぺったり張り付くように乗っかって、彼女の手元を興味深く覗いている。
『クゥ(投網の修理みたい)』
〈そう…ですか?じゃあ……そっちも…お手伝い…出来ます…ね〉
やってみた所、クインとも話が出来た。
クイン曰く「ポロは自分と同じ匂いがする」だそうだ。
良く分からないがクインがそう言うならそうなんだろうと納得して、深く考えない事にする。
奴隷というのはあまり考えない。
言われた事を言われたようにするだけ。
手際良くするには?とかは考えるが、どうして自分が?とかを考えると気が狂ってしまう。
多分、ゼインも何故自分は奴隷なのか?とかは考えた事は無いだろう。
そうやって2人は生き延びた……それが、奴隷の生きる術なのだ。