生きる術-11
「ふっ……う」
ただでさえ荒い呼吸が余計荒くなる。
肋骨を1本1本確かめるように指で撫で、顔を首筋に寄せた。
「意外と綺麗な肌なのな」
「黙っ…れっ」
ゼインとヤルしか生き伸びる道が無いのなら諦める。
これぐらいの事で死んで堪るかっ……だが、出来るなら相手は女だと思っていたい。
幸いな事に樹液のせいで視界はぼやけてるし、ゼインは小柄なので女と思えない事も無いのだ。
しかし、喋られると男としか思えない。
だから、せめて黙っていてほしい……スランの切実な願いに、ゼインは喉の奥で笑ってご奉仕に専念する事にした。
まさかそんな営みが火山で行われているとは知らないポロとケイは、洗濯物を畳みながら話をしていた。
「ポロの声は俺にしか聞こえないのかな?」
〈そう…みたい…です〉
声というか思念……クインと話をしているみたいな感じだ。
だが、ポロの方は途切れ途切れで雑音が入る。
こういう会話に慣れていないからか、会話自体に慣れていないのか……。
〈そういえば……クインさん…はどこへ?〉
朝から姿を見ない事にやっと気づいてポロは首を傾げた。
「城に行ってる。俺みたいな精霊人はパートナーと意識共有が出来てな。離れててもお互い連絡が取れるんだ。だから、ステラ様……王様の弟の奥さんの出産報告してもらおうと思ってさ」
精霊は、自分と魔力の合う人間を見つけるとその魔力を吸って成長する。
そして、魔力を貰う代わりに人間を手助けするのだ。
その関係は親のような、兄弟のような、恋人のような……上手く言えないが運命共同体。
〈素敵…ですね〉
「俺もそう思う。クインは最高だよ」
自分にもそういう相手が居れば良いのに……ポロは目を伏せて思った。
「ポロにはゼインもカリーも居るじゃん?なんかスランは微妙だけどさ」
ケイの言葉にポロは目を丸くする。
〈今の……?〉
「え?話してなかった?」
どうやら念話のコントロールが上手く出来ずに、ポロ側の思考はケイに筒抜けのようだ。
ポロは両手で頬を包み、顔を赤くする。
「あ〜…っと……どうしよう?」
ケイは暫く考えて、ポンと手を叩いた。
「そうか!クインと話してるみたいな感じだから、クインと意識共有を切るような感じで……いや?そもそもポロとは意識共有をしているワケじゃないのか……」
両腕を組んで再び考えだしたケイを見てポロはため息をつく。