第二章 破綻の夜-1
第二章 破綻の夜
夢を見た。
僕はベッドルームの入り口のところに立って、目の前にあるダブルのベッドをぼんやりと見ている。
黒い影に浸食された、艶やかな光沢を放つブラウンのシーツ。
「コウちゃん、こっちへ来なさい」
ベッドの向こう、暗がりの中に母がいて、僕に向かって微笑みかける。
闇の中から差し出される白くしなやかな手、影にえぐられた慈しみ深い笑み。
僕は誘われるがままに手を伸ばし、その手に導かれてシーツの上へ膝を上げる。
母は僕の顔をやさしく撫でた。母の薫り、笑みを浮かべる濡れた唇。
僕をベッドの上へ寝かせ、自分は反対向きになって、僕の腰のベルトに指をかける。
艶やかに光る白い双臀が、僕に向かって迫って来る。
黒のレースショーツを着けた、母のお尻。
それは徐々に大きくなって、やがて僕の鼻先が、その深い谷間へと飲み込まれていく。
ムンズ・・
鼻先が捉える、レースショーツにあしらわれた飾り彫りの感触。
重厚感のあるその親しみ深い柔さと、重苦しい密着。
僕は母の芳香を確かめようと、布地の中に意識を浸し胸一杯に息を吸った。
しかしその薄い布地からは、煙草の煙と知らない男のニオイがして、僕は思わずギョッとする。
そして影に切り刻まれた皺だらけのシーツも、それと同じ臭いをさせていることに僕は気付いた。
そうか、ここは叔父さんの家か・・
暗い部屋の壁に、クローゼットが開いたままになっていて、濃厚な影の中にボンヤリと白く人影が見える。僕は目の細め、闇の中へ焦点を合わると、白い影は二人いて、それは母と叔父だった。
彼らは下着姿で肩を寄せ合い、僕らがしていることをじいっと見てた。
慌てて上体を起こす。僕に覆い被さる、母だと思っていた人は実は叔母で、彼女は僕のブリーフから萎えたペニスを取り出して、それにいやらしい造作で舌を這わせ、幸福そうな笑みを浮かべていた。
『違うんだこれは』
母に弁解したい、叔父に弁解したい
しかし母と叔父は、満足そうな笑みを浮かべて互いに顔を見合わせると、どちらからというでもなく肩を抱き合い、唇を重ね合わせて闇に沈み、やがて膚の放つ光沢の一片もがクローゼットの闇に消え去ると、後に唾液を交換する濃密な音だけが残された。