ピアス-6
昨日の夜、名前も覚えられないような女を久しぶりに抱いて
無理やりスマホに入れられたアドレスを削除しようと
家へ帰る途中に操作しながら歩いていると
「潤」
と、俺を呼ぶ声がして
俺は一瞬動けなかった。
俺を名前で呼ぶ女。
その声だけで誰だかわかる女。
アドレナリンが駆け巡る。
落ち着け。俺・・・
「潤」
2度目に呼ばれてゆっくりと
声のした方を振り向いた。
「潤。ただいま」
3年前。
俺の前から突然姿を消した女が・・・
初めて愛した女が
目の前に立っていた。
「千明」
絞り出すように
発した声を千明は聞き分けると
俺が愛してやまなかった笑顔で
俺に近づいてきた。
「ただいま。潤」